昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

たけしさんとは4歳差

―― たけしさんの印象はいかがでしたか?

高橋 シャイな人だなっていう感じですね。僕とあんまり年、変わらないよね。

 

―― たけしさんが47年生まれで、高橋さんが51年なので4歳差ですね。

高橋 バカなことをするのが好きっていうのが共通してますね。ツービートのテンポの速い漫才がカルチャーになっていく感じと、ユーチューバーがカルチャーになっていく感じってちょっと似てる気がします。どちらとも初期のカルチャーが持っている破天荒な感じ、荒削りなものがあるでしょう。そういう流れって、やっぱり若い子に聞かなきゃいけないねと思っていて、ある意味で今、僕の先生は子どもです。これもこの前、教えてもらったんだけど『UNDERTALE』って知ってます?

―― ああ、なんか名前だけは聞いたことがある。

高橋 ダウンロードして遊ぶゲームなんですけど、できたのが2015年。だから、まだ3年ぐらい。もうすぐプレステ4とかSwitchとかで一斉に出るらしいんですけど、子どもたちが「これいいんだよね」ってやっててゲーム動画を見せてもらったの。こんなすごいものがあるのかと思って久々に脱帽。驚愕のレベルの高さですよ。

『UNDERTALE』の画期的なアイデアにテレビの未来がある

―― もう全然子どもじゃなくて大人がやっても?

高橋 誰でもできる。トビー・フォックスさんっていうアメリカ人が1人で作ったゲームなんですね。クラウドファンディングで。協力してくれた人はいるらしいけど、基本的に1人で作った。この人はもともとミュージシャンなんで、150曲ぐらいこのために作曲したんだけど、一時、ゲーム音楽ベスト100のうち60曲がこの『UNDERTALE』だったんだって。それくらいまず音楽が素晴らしい。もう一つすごいのが、画面がファミコンみたいなの。

 

―― ドットが粗いんですね。

高橋 完全にファミコンの画面で、わざと超アナログ感を出している。悪魔みたいなキャラが次々出てきて、戦っていくっていうゲームなんですけど、売りは、「誰も殺さないロールプレイングゲーム」。これ、画期的なのはコマンド選択の中に「MERCY(許す)」っていうのがあるんですよ。

―― 許す、ですか。

高橋 やっつけてもいいんだけど、全員殺さないっていう選択もある。それによってエンディングが全部違うの。制作者はそもそも、敵をやっつけるゲームに疑問を持っていたんだそうです。

―― 面白い。

高橋 デジタルネイティブ世代の文化を知ると面白いです。哲学者の鶴見俊輔さんが「若い人は、私たちにないものも持っている」ということをおっしゃっていて、漫画もテレビも世代が遠く離れた文化であっても親しんで接していました。「『寄生獣』は素晴らしい」とまで言うくらいね。その態度って尊敬できるなと思っていて、いつだって、どんな分野であろうと、新しい波を「共感はできなくても理解しようとする」態度は必要だし、もっと言えば新しい感性を取り込むことで、古いものも生きていくことができると思うんです。

 だから、テレビだって、テレビを観なくなったポストテレビ世代からこそ、いろいろ吸収しなきゃならないと思います。僕は番審でも言っているんです。はじめしゃちょーの編集技術とか、『HikakinTV』の持ってる包容力みたいなのとか、『UNDERTALE』の画期的なアイデアみたいなものにテレビの未来があるって。それを踏まえてテレビが創成期に持っていた実験精神にもう一度立ち返ってみたらどうなんだろうって。

親指シフトのキーボードを使い続けている。「親指シフト仲間は他に、矢作俊彦。宮部みゆきさんもそうじゃないかな」

テレビには、いつだって実験の気持ちを忘れないでいてほしい

――高橋さんが子どものころ観ていた『源氏物語』のアバンギャルドさとか、『11PM』の挑戦とかは、まさに「実験精神」ですよね。

高橋 テレビはもはや巨大産業、制度になってしまいましたよね。だから実験も冒険もやりにくい状況なんだと思います。でも、それって勿体ないですよね。本当に、僕が夢中になっていた草創期のテレビって、生放送が多かったこともあるけど、何が起こるかわからないスリリングなものだったし、ある種メチャクチャなエネルギーを持っていたと思います。だから、危機の時代にあるテレビは権威を脱ぎ捨てて、無一物の状態から出発すればいいんじゃないかな。

 小説だってそうだけど、文化なんてそもそも卑しいジャンルから徐々に制度化されて、いつのまにか「芸術」と崇められてしまう運命を辿りがちなんです。でもそれに寄りかかっていては「次」はないですよね。だから僕を形成してくれたテレビには、いつだって実験の気持ちを忘れないでいてほしいって思います。

 

#1 テレビっ子歴50年! 小説家・高橋源一郎「朝まで生テレビに出るわけないでしょ」
http://bunshun.jp/articles/-/7503

#2 “競馬する小説家”高橋源一郎が語る『うるぐす』とダービーと『カルテット』
http://bunshun.jp/articles/-/7504

写真=鈴木七絵/文藝春秋

たかはし・げんいちろう/1951年広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作を受賞しデビュー。88年『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞、2002年『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞、12年『さよならクリストファー・ロビン』で谷崎潤一郎賞を受賞。6月7日より『日本文学盛衰史』が平田オリザ脚本によって舞台化される(http://www.seinendan.org/play/2018/01/6542)。

この記事の写真(10枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー