4月4日、韓国・尹錫悦大統領の罷免の是非をめぐる弾劾審判の決定が下される。そもそも戒厳令の狙いは何だったのか。前日韓議員連盟幹事長の武田良太氏と前駐日韓国大使の尹徳敏氏が読み解いた。

「これは韓国ドラマか?」

 ――戒厳令の一報を聞いた時、どう思われましたか。

 武田 テレビのニュース速報を見た時、「これは韓国ドラマか?」と思ったくらいですよ。ところが、画面に映るのは紛れもなく尹大統領本人。「あれ? 何が起きたんだろうか」というのが第一印象でした。

テレビで演説する尹大統領 Ⓒ時事通信社

 尹 一言で表現するのは難しいですが、最初に浮かんだのは、韓国語で「アンタカッタ」、つまり、「切ない」という感情でしたね。確かに、思い通りの国政運営ができない政治状況に陥っていたことは事実です。野党は尹政権発足後、弾劾訴追案を29本も提出して、政府高官や検事を軒並み職務停止に追いやった。さらには特別検察法を発議して、夫人を巡る収賄などの疑惑も追及しました。愛妻家であった大統領にとっては、耐え難かったのかもしれません。

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 ただ、それでも、戒厳令という判断は「まさか」。戒厳令というのは、とても重いんですね。かつての軍政時代を想起させますし、それこそ北朝鮮が攻めてきたとか、そういう軍事的な衝突でも起きない限りは出してはいけないもの。大統領職を懸けて決断する局面だったとはとても思えませんでした。

 武田 実は、戒厳令の直前、私は尹大統領から韓国に招かれていたんです。昨年10月の衆院選で私が落選した直後、「慰労会をするから韓国に来ませんか?」と誘ってくれた。結局、予定が合わずに行けなかったのですが、指定された日は戒厳令を宣布する2日前でした。