しかし、右肩上がりの時代はとうの昔に終わりました。1991年にバブルが崩壊した後、日本は低成長期に入り、人口も2008年にピークに達し、減少期に入りました。地方の過疎化もどんどん進んでいます。それに伴い財源不足や人手不足も顕著になってきました。このような状況下では、インフラが老朽化したら作り直せばいい、というスクラップ&ビルドの発想は捨てなければなりません。必要なのは、今あるものを直し、長持ちさせていく、メンテナンスを含むマネジメントの発想です。
築50年からが勝負
インフラが高齢化して、いわば「成人病」に注意しなければならない年数は、作られてからだいたい50年くらいと考えられています。日本のインフラはすでに述べたように60年代から80年代に作られたものが多いので、築50年を迎えるインフラは下水道であれば2020年時点で全体の5%だったのが、2030年には16%、2040年には35%にもなります。
道路橋の状況は、さらに顕著です。築50年を迎える道路橋は2020年に全体の30%だったのですが、2030年には55%、2040年には75%に達します。
この“50年”は、あくまで目安です。長持ちするように設計され、頑丈に造られ、丁寧にメンテナンスされているものであれば、もっと長く安全に使うことができます。しかし、いま日本で日夜使われているインフラは、そのようなものばかりではありません。「インフラは誰かが何とかしてくれるもの」という意識から国民が覚醒し、高齢期に入るインフラの修繕・改良・更新を適切に組み合わせて、合理的なインフラマネジメントを着実に実施していく体制を今かためなければ、様々な重大な事態が繰り返し起きかねません。
※本記事の全文(約7000文字)は、「文藝春秋」2025年4月号と「文藝春秋PLUS」に掲載されています(家田仁「老朽インフラ事故防止に秘策あり」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・築50年からが勝負
・笹子トンネル事故の衝撃
・財源も人材も足りない
・“群マネ”を導入せよ
・受注・発注も一括で
・メンテは待ったなし
・インフラを政治的イシューに

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