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サイバー戦があるとすれば、攻撃よりもプロパガンダ

――「優れた技術は魔法と見分けがつかない」という言葉があります。まさに今のサイバー技術は魔法のような扱いをうけていますが、実はそうではなく、手の届く、現実の技術なんですね。それでは戦争におけるサイバー攻撃とはどのように捉えるべきなのでしょうか。

 サイバーはドローンの強制着陸やミサイルの発射を止めるとかというよりは、どちらかと言うとプロパガンダだとか、政府要人の秘密を暴いて事前に戦争を食い止めるだとか、そういう情報を上手く使う、情報優位にどうやって立つかという局面で戦争においては活躍していくのかなと思っています。

――純戦術的にではなく、戦略レベルで活用されるということですね。実際そういうことは起きているんでしょうか。ロシアが欧米の選挙介入などでやっているとか色んな話がありますが。

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 起きているんですけど、嘘も多いんじゃないかと思っていて……。

サイバーセキュリティのエキスパート・林真吾氏

伊藤弘太郎 サイバー攻撃をどこかの国がやっているという嘘ですか?

 そうです。あるマルウェアを解析したどなたかが、ロシア語のパスワード解読メッセージみたいなのを見つけたらしいんですね。で、ロシア語で出てきたから「これはロシア人のために作ったものだろう」という。でもそれは単純すぎますよね。

 また「中国っぽい」と思ってたどっていくと、日本のサーバーが踏み台になっていて、更に中国のサイバーを経由していただけだとか。

 だから発信源の特定が難しいですし、ライバル国を装って、あたかも向こうの情報収集活動に見せかけたり……。法を守るという前提に立つと、そういう行為を捕まえる術は今のところ、技術側には無理という状況になっています。要するに誰がやったかわからない。

韓国はいかにして武器輸出国家になったか

――ここで韓国の安全保障政策がご専門の伊藤さん、いかがでしょうか。韓国はロボット兵器を北朝鮮との軍事境界線に投入していたり、3Dプリンタで兵器の維持整備やっていたり、最新テクノロジーの活用という点では自衛隊より進んでいる面がある、と感じています。

伊藤 韓国という国家は、我々と違って「国家の生存」に対する思いが強いわけです。それはやはり北と面していて休戦状態にあること、もう1つはアメリカにいつ見捨てられるか分からないという状況で、これまでの歴史の中で両国間には多くの葛藤がありました。独立後の韓国は、技術ゼロの状態からスタートして、最初はアメリカ製の武器、小銃を分解して、もう1回組み立てる。技術を盗めというところからスタートしたんです。

 日本の自動車産業と一緒ですね。

伊藤 日本は戦後、まだ産業と技術基盤が残っていました。韓国の場合は、アメリカが最新技術を与えたり、与えなかったりしたわけです。なぜかというと、与えすぎて強くなると北を攻めちゃう恐れがあったから。困った韓国は、核兵器を秘密裏に開発しちゃったり、弾道ミサイルを持ったりと色々やるわけですよ、あの手この手で。

 彼らは今、無人機に一番力を入れています。去年、ソウルの「国際航空宇宙・防衛産業展示会」というイベントに行ったところ、展示場に入ってすぐの一番目立つエリアはすべて無人機の展示なんですよ。

ソウルの「国際航空宇宙・防衛産業展示会」のパンフレット

 それは韓国のメーカーですか?

伊藤 ほとんど韓国でしたね。ちなみにイスラエルとも共同開発をするそうです。

 ほとんど!