まるで商業施設のようなオランダの空港
海外に目を向ければ、オランダ、アムステルダムのスキポール空港は空港全体がお洒落な商業施設のようだ。イギリス、ロンドンのセント・パンクラス駅、スペイン、マドリードのアトーチャ駅などは高貴な外観と品格を備えた駅だ。
日本は高度成長期から現代に至るまで、「経済優先」を掲げ、国内移動の手段として新幹線や航空路線を整備し、その発着点として、駅や空港を位置付けてきた。経済の中心は、あくまでも東京、つまり常に東京が日本の中心であることを大前提に社会インフラが整備されてきた。したがっていかにして地方から東京に向かうアクセスが良くなるのか、新幹線や航空機によって、地方と首都・東京とを結びつけていくことだけが考え方の中心であり、地方の駅や空港の姿カタチなどにあまり関心が払われなかった。つまりすべての交通網が東京への「上り」を中心に考えられてきたといえるのだ。
東京につながった多くの地方では、実際に若い世代を中心にして、東京に出てそのまま地方には戻ってこなくなるという「ストロー現象」が発生した。地方の人口は減少し、今や日本の総人口の3分の1が東京を中心とした首都圏に集中する事態となっていることに、新幹線と航空機が果たした役割は大きなものがある。
地方都市間で「熾烈な競争」が始まる
翻って現代。日本はかつてのような経済成長は望むべくもない状況にある。人口減少だけでなく人口構成の高齢化は激しく、今は多くの人口を集めている首都圏ですら、これから激しい高齢社会を迎えるといわれている。
「量的拡大」に期待できない今後の日本においては、地方都市間で熾烈な「生き残り」をかけた競争が不可避となる。需要が少なくなる日本だけで物事を考えていてもブレークスルーはできない。経済を牽引してきた東京を頼ろうにも、国全体のパイが細る中、地方に恩恵が及ぶ「トリクルダウン」効果は望み薄と言わざるを得ない。
日本の地方に目を向け始めた訪日外国人
ところが最近、いくつかの地方でちょっとした「異変」が起こっている。訪日外国人の激増だ。彼らはかつてのようには東京や京都、大阪といった大都市ばかりを訪れるわけではなく、地方にも足を向け始めている。そして日本の自然や食べ物、歴史や風土を肌で感じ、楽しむようになっている。彼らは「観光」の目的だけでなく、自らが「気に入った」日本に子供を留学させ、日本で就職し、在留する外国人も増えてきた。
一極集中がすすむ東京からは距離を置き、地方で活躍の場を探す日本の若者も確実に増えてきた。ネットが自由に使える世の中で、実は生活コストが高い東京などの大都市を嫌い、地方での仕事、生活を求める層も着実に増加している。
ストローで吸い取られたはずの若者が、新幹線や航空機で地方にやってくる。外国人が地方空港に直接降り立ってくる。新幹線の駅や空港はこれまでの人を送り出す「上り」中心の場から多くの人を迎え入れる「下り」中心の場に変化し始めているのだ。