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中国の監視社会化、どのくらい恐い?

安田 中国サイバー社会の闇として語られることが多いのは、現地の監視社会化です。世界最多の監視カメラが国内に設置され、大都市では顔認証機能やAIも活用した個人の特定や追跡も可能になっている。中国で悪いことはできない、と言われます。

上海の空港にて。入国する外国人は10本の指の指紋とパスポートの顔写真がビッグデータ上に集積される。ただ、他国でも似たようなことはあるのだが(2018年4月安田撮影)

山谷 ですね。確かにどの程度までかわからないけど導入されている。ただ、「危なさ」の実態を把握することも大事です。例えば昨年から話題の無人コンビニですが、社員に聞いたところ監視カメラは犯罪抑止にしかなっていないと言うんですよ。犯人逮捕を目指すとすごくコストがかかるので、実態としては簡易システムにとどまっているとか。

安田 街角に大量にある監視カメラは不気味です。しかし、中国ってメリハリの大きい国なので、監視システムが本気でマークしているのは体制の脅威になる人たちに限られているような感じはあります。例えば、ウイグル人をはじめとした少数民族や、民主化運動・人権関連運動の関係者の行動ですね。

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 あとは、外国人のジャーナリストや企業の上層部の人の行動。中国自身が自国のそういう人をスパイにして海外に送り込んでいるので、外国から同じことをされる懸念から、彼らについてはそこそこ真面目に監視していると思う。でも、政治的な側面を持たない一般庶民は、体制の脅威にならないから放置に近いんじゃないかなあ。

山谷 SNSや掲示板のネット検閲だってそうじゃないですか。有象無象のデータからNGワードを自動で抽出して、さらに人力でふるいにかけにかけて、やっと怪しい人を見つけ出す。ないしは安田さんの言ったように最初からマークしている人を追う。

「現場の人が中国人」という現実

北京空港での一コマ。空港内を案内する情報をQRコードで読み取れるとアピール……しているが、現場で働く人はユルい(2018年5月安田撮影)

安田 特定の人間を追跡するパターンはともかく、怪しい人を「人力でふるいにかける」薄く広い仕事は、実際はかなり適当にしかやっていないと思う。「中国は人間が多い(だからきっちりと調べるのはめんどくさい)」みたいな、毎度おなじみの理由で現場が動いていそうな……。

山谷 中国人、真面目にやるときとやらないときの差がものすごいですし、監視業務をそこまで真剣にやるとは思えないですよ。地下鉄の手荷物検査も、一応はあるけれど現場の人はめちゃくちゃ雑ですしね。

安田 「現場の人が中国人」という事実が、中国の監視社会化に一定の歯止めを与えているような気がします。仮に現場の人が日本人なら、常に本気でチェックするし、仕事と給料が釣り合わなくても真面目に働くので、国民の行動を一人残さず監視する恐怖のディストピア社会が出来上がりかねないんですが(笑)。

山谷 うん。中国でなにかが広範に運用されるときの、現場の人の仕事ぶりの標準化されてなさとか、意識の低さをナメちゃいけないですよね。