「ものづくり」で日本は完全に凌駕された…今度は我々が中国の力を利用する番だ

短期集中連載ルポ第3回

井上 久男 ジャーナリスト

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世界最大の鋳造機メーカー「LK」を日本人記者として初取材した

「ギガキャスト」という新技術

 これまでの連載では自動運転システムなど、主にソフトウエア領域における中国EV業界のめざましい発展ぶりを報告してきた。最終回の第3回は、車体などのハード領域での現状をレポートしたい。

「日本人の記者を受け入れるのは、おそらく初めてだと思います」

 こう語るのは、世界最大の鋳造機メーカーと言われるLKテクノロジーホールディングス(本社・香港。以下、LK)の劉卓銘CEO(最高経営責任者)だ。同社が世界的に注目を浴びたのは、テスラが上海工場で製造している「モデルY」開発に大きく貢献したからだ。

 開発の重要なカギは車体の軽量化だった。ユーザーの利便性を考えれば、EVは1回のフル充電でどれだけ長く走れるかが重要。だが、航続距離を延ばそうとすれば、消費電力を抑えるために車体の軽量化が必須となる。LKは独自技術でモデルYの軽量化を実現したのである。

 その技術は「ギガキャスト」、あるいは「ギガプレス」と呼ばれる。これまで車体の床部分は、鉄を鋳造した数百ものプレス部品を溶接する工法が主流だった。ところがギガキャストは、鉄より軽いアルミ合金を溶かして、巨大な金型で一体成型してしまう。すると数百の部品で構成されていた床部分が、たったの2、3パーツでできてしまう。工程数が減り、軽量化できる。さらに溶接ロボットが不要となり、設備投資も節約できる。その後、EVメーカーでギガキャスト導入が進んでいるのも、頷ける道理だ。

7000トン級のギガキャスト機で一体成型された部品(筆者撮影)

 テスラが世界に先駆けて導入した技術を開発したLKは、1979年に香港で劉CEOの父である劉相尚氏が創業した。最初は玩具や日用品などを作る小型鋳造機メーカーだったが、着実に業容を拡大してきた。

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