哲学者の梅原猛(うめはらたけし)は、古代史研究で次々と新説を唱え、新しい研究機関を創設し、文化行政にも多大な貢献をした。
1987(昭和62)年、国際日本文化研究センターの創設にこぎつけ、自ら初代所長となる。歴史、文化、思想の個性的な研究者を集めるとともに、成果を一般向けに発信することを目指した。
「そんなのは無理と批判されたが、実現すると『夢から出たまこと』などといわれました」
25(大正14)年、仙台市に生まれる。父は東北帝大の学生で母はまだ女学生だった。双方の家族が結婚に反対し、生後1年ほどで母が死去したため伯父に預けられた。幼少時の心の傷と、養父への感謝の念が、自分をかたちづくったと後に語っている。
子供のころは「空想にふけっていた」ので成績は良くなかった。有名旧制中学を受験するが失敗し私立の中学に入学する。中学時代は文学に夢中になり小説を書き始め、1浪して入った旧制高校では哲学に憧れて、京都帝大をめざした。戦争末期、二等兵で入営のさいには、西田幾多郎の『善の研究』と『万葉集』を携えていたという。
戦後、京大に復学するとニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』とハイデッガーの『存在と時間』を原書で読みふけった。やがて独自の視点から歴史や文化を考察するようになり、ユニークな著作を次々と発表する。
なかでも梅原の名を一般に知らしめたのが、72年に刊行した『隠された十字架 法隆寺論』だった。法隆寺は仏教の普及ではなく、聖徳太子の怨霊を封じ込めるために建てられたと主張し、ミステリー的な興味もあって多くの読者を魅了した。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から
-
1カ月プラン
新規登録は50%オフ
初月は1,200円
600円 / 月(税込)
※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。
-
オススメ
1年プラン
新規登録は50%オフ
900円 / 月
450円 / 月(税込)
初回特別価格5,400円 / 年(税込)
※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2019年3月号