佐藤純彌、米沢富美子、岡留安則、直木孝次郎、橋本治

蓋棺録

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 映画監督の佐藤純彌(さとうじゅんや)は、スケールの大きな作品を次々と成功させて、「ミスター超大作」と呼ばれた。

 かつてない規模といわれたのが、1988(昭和63)年公開の日中合作映画『敦煌』で、予算は40億円を超えた。途中まで深作欣二監督が進めていた企画だが、中国側との調整も難航して、結局、佐藤に代わる。このときすでに7億円が投入されていた。佐藤はロケ地で石拾いまでして完成に導き、興行収入82億円を叩きだした。

 32年、東京に生まれる。父親は旧制中学の先生だったが、日本刀研究家に転じた。兄の純一はロシア語学者で後に東大教授。旧制都立一中(現・日比谷高校)に入学するが、空襲が激しくなり、一時、山形県に疎開した。

 戦後、日比谷高校から東京大学文学部に入学。在学中は演劇に夢中になるが、東映に入社し、助監督をへて63年の『陸軍残虐物語』で監督デビューを果たす。陸軍内部のリンチをテーマにした同作品は、三國連太郎の好演もあって高い評価を得た。

 68年に東映を退社後も、73年の『やくざと抗争 実録安藤組』など「やくざ路線」の監督を引き受け、75年の『新幹線大爆破』や76年の『君よ憤怒の河を渉れ』では高倉健を主役にハードボイルド的な作品に仕上げた。77年には角川映画の『人間の証明』で興行的にも成功し、翌年の『野性の証明』とともにビジネス界から注目される。

 日中国交正常化10周年記念映画として製作された82年の『未完の対局』では、歴史に翻弄された日中の棋士たちを中心に、戦争を挟んだ時代の別離と和解を描き出し、多くの賞を獲得した。

 さらに同作品によって培われた中国との関係を基礎に、84年の『空海』、88年の『敦煌』を製作する。当時、中国では『君よ憤怒の河を渉れ』が大ヒットして「10億人が観た」といわれ、佐藤監督の名はすでに知られていた。

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source : 文藝春秋 2019年4月号

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