第41代米大統領ジョージ・H・W・ブッシュは、冷戦終結期の指導者として、世界を安定へと導いた。

　1990年8月、イラクがクウェートに侵攻したとき、すぐに決断して翌年1月には米軍をサウジアラビアに派兵。さらに国連をリードして多国籍軍を編成、イラク軍を自国内に押し返すことに成功する。ブッシュへの支持率は89パーセントに達した。

　24年、銀行家で上院議員となる父と有力な投資家の娘である母の次男として生まれる。学校の成績がよくスポーツも得意だった。17歳の時パーティで大手出版社社長の娘バーバラに会うが、この年に太平洋戦争が始まる。

　ブッシュは父の教育通り「国家への義務」を果たすべく海軍に志願。父は慌てたが、息子は迷わずパイロットの訓練を受け、42年からアベンジャー雷撃機に乗り組んで最前線で戦った。愛機を「バーバラ」と名づけていた。

　44年6月、マリアナ沖海戦で日本機に撃墜される。同年9月にも父島上空で対空砲火を浴び脱出するが、同乗の2人は戦死した。58回の戦闘に参加し殊勲飛行十字章を受章。翌年1月、バーバラと結婚し、昨年4月に先立たれるまで「おしどり夫婦」といわれた。

　戦後、イェール大学に入学して野球部のキャプテンを務め、卒業後、テキサス州で石油ビジネスに従事した。64年、いきなり上院議員に立候補して落選する。その後、下院議員に2回当選し、70年に再び上院議員に挑戦したが、またしても敗北した。

　しかし、有望な政治家として評価されるようになり、国連大使や中国特命全権公使に指名される。76年からCIA長官も務めた。80年には共和党の大統領候補をレーガンと争うが敗れる。「その晩、私はバーバラとメキシコ料理店にいった。何があっても食欲が落ちることはない」。

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