西澤潤一、長部日出雄、角替和枝、ロナルド・ドーア、山崎朋子

蓋棺録

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 元東北大学総長の西澤潤一(にしざわじゅんいち)は、半導体研究者として世界の光通信技術をリードし、日本人の創造性を生みだす教育について論じた。

 1980年代、光通信が実用化される中で西澤は毎年のようにノーベル物理学賞候補となった。発光素子の半導体レーザー、受光素子のフォトダイオード、光を伝達する集束型グラスファイバー。光通信に必要な3要素を1人で何十年も前に開発していた。

 26(大正15)年、仙台市に生まれる。父は東北帝国大学の工学部教授で後に学部長。「いたずら好き」の小学生で、成績が一番の生徒に与えられる宮城県知事賞を、他の父兄からのクレームのために逃したという。

 旧制二高(現・東北大学)時代にはニーチェを愛読した。物理学を専攻するつもりだったが、父の強い希望で東北帝大の工学部に進学する。大学院をへて渡辺寧研究室に所属し、27歳で助教授に抜擢。56(昭和31)年、「企業再建の神様」と呼ばれた早川種三の娘・竹子と結婚している。

 助教授になる以前から、すでに半導体の研究を始めていた。米国での研究の進展を論文で推測しながら、手探りの状態が続いた。

 しかし、50年に整流器に用いるPINダイオードを独自に開発し特許申請する。米国のゼネラル・エレクトリック社は、同様の特許申請をその18日後にしたので西澤が早かったが、日本企業はなかなか西澤の特許を使おうとしなかった。

 半導体レーザーも57年に特許申請をしていた。しかし、西澤が日本のメーカーに働きかけても、62年に米国で実用化し始めるまで取り組むところはなかった。当時は学会でも新説を発表すると「田舎の若造が何をいうか」といった反応が多かったという。

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source : 文藝春秋 2019年1月号

genre : エンタメ 芸能