輪島大士、佐々淳行、芦田淳、下村脩、仙谷由人

蓋棺録

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 元横綱・輪島大士(わじまひろし)(本名・輪島博)は、天才横綱と讃えられたが、引退後には波乱の人生が待っていた。

 1973(昭和48)年7月、第54代横綱に昇進した。初の学生横綱出身であり、ライバル初代貴ノ花との激闘を経たのちの栄冠だった。185センチの引き締まった体での土俵入りは美しく、相撲界の新時代を告げる「蔵前の星」と讃えられた。

 48年、石川県七尾市に生まれる。実家はパン屋。中学時代に県の相撲大会で優勝し、高校2年のときには評判を聞いて大鵬がスカウトにきた。日本大学に進んでからは2年続けて学生横綱に輝き、名門の花籠部屋に入門した。

 同時期に大関に昇進した貴ノ花とは激しく競り合い「貴輪時代」と呼ばれた。4度目の優勝をとげた73年の九州場所では、取組中に輪島の指が貴ノ花の腕にささり、輪島の人差し指と中指との間が裂けて、土俵が血だらけになるという出来事もあった。

 横綱になってからは、急追してきた北の湖と「輪湖時代」を現出させる。北の湖が横綱昇進を決めた74年の名古屋場所では、2敗して後れをとっていたが、千秋楽の本割で北の湖を「黄金の左」で土俵に転がし、決定戦に持ち込んで逆転優勝した。

 栄光のピークを迎えたのは、81年に11代花籠親方の令嬢と豪華な結婚式をあげ、同年の3月に引退して花籠部屋を継いだときだった。しかし、このときから、輪島の運命は暗転する。

 同年秋に先代親方が急逝。銀座のホステスとの愛人関係が発覚し、妻の自殺未遂がスキャンダルとなる。4年後には実妹が経営していたチャンコ料理店が、3億円とも10億円ともいわれる負債で倒産して裁判沙汰となった。

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source : 文藝春秋 2018年12月号

genre : エンタメ 芸能