叔父吉右衛門の煙草入れ

日本の顔 インタビュー

松本 幸四郎 歌舞伎役者
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16年前に目にした「生の鬼平」の型を学びながら

 

(松本幸四郎さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい)

『鬼平犯科帳』のお話をいただいたとき、とうとう、祖父や叔父によって演じ継がれてきた鬼平の「五代目に」と言ってもらえる自分になったのだ、と静かな興奮がこみ上げてきました。叔父(二代目中村吉右衛門)の演じた長谷川平蔵はリアルタイムで見ていましたから、「あの役を自分が!?」という、腹の底からじわりと湧き上がるような熱い高揚を感じたのです。

 衣裳合わせで藤巴紋の入った陣笠を被り、袴を着けて、と火事装束に身を包んだ自分の姿を鏡に映した時には、映画村へ来たかのような錯覚に陥りました。思わず振り返り、「写真撮って!」と言ってしまいそうになったくらい(笑)。でも、「いやいや、ちがう」と。これからは自分が平蔵を「演じる」のだ、と思うと身がビリリと引き締まり、現場では、ひとたび衣裳を身につけたらカメラの前に立つまでは誰とも話さないほどの緊張感を持つようになりました。

松本幸四郎 ©文藝春秋

 2023年の池波正太郎生誕100年を記念し、これまで幾度も映像化されてきた『鬼平犯科帳』の新シリーズが始動。主人公の長谷川平蔵役を十代目松本幸四郎が務めることが決まり、今年1月のテレビスペシャル「本所・桜屋敷」を皮切りに、5月には劇場版「血闘」、同月以降には連続シリーズ「でくの十蔵」「血頭の丹兵衛」と4作品が製作されている。

 江戸時代後期、盗賊たちに「鬼の平蔵」と恐れられた「火付盗賊改方」長官(おかしら)長谷川平蔵。1969年から放送された連続テレビドラマでは、幸四郎の祖父である初代松本白鸚が演じ、丹波哲郎、萬屋錦之介と続いて、幸四郎の叔父・中村吉右衛門が28年間にわたり四代目を演じてきた。

 はじめて鬼平シリーズに出演させていただいたのは2008年のこと。スペシャルドラマ『引き込み女』に医師の井上玄庵役で出演しました。そのとき、叔父の楽屋で目にした光景は今でも忘れません。

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source : 文藝春秋 2024年5月号

genre : エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ 歴史