著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、鴻上尚史さん(作家・演出家)です。
父親のこと
去年の12月、父親は亡くなった。
故郷の「サービス付き介護住宅」という所が父親の最後の住処になった。
折りを見ては帰省し、父親を尋ねた。「何か欲しいものはない?」と聞くと、「小説と寿司」と答えた。『ハリー・ポッター』も『ナルニア国物語』も『指輪物語』も『宮本武蔵』も『坂の上の雲』も『竜馬がゆく』も、父親は熱心に読み続けた。
寿司は、回転寿司のお土産用のものだったが、父親は喜んでくれた。
ただ、話は続かなかった。小説と寿司を渡し、近況を尋ねた後、5分もすると、会話は途切れがちになった。
仲が悪いわけではない。
父親は小学校の教師だったが、ブラックという意識がなかった時代で、猛烈に働いた。
毎日、ガリ刷りで「学級通信」を出し、遅くまで翌日の授業の準備をした。
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source : 文藝春秋 2020年12月号