独占手記 シリア1218日幽閉記

ライフ 社会 国際

地獄だった──武装勢力に身動きを禁じられ、目の前で囚人の拷問が行われる。

生ゴミのような食事を出され、体は骨と皮だけに…私の精神は狂う寸前だった

安田純平氏 ©文藝春秋

 拘束されている間、私の脳裏では、これまでの自分の人生における負の側面ばかりが、走馬燈のように回り続けていた。

「俺は一体どこで間違えてしまったのか。どうして、もっとしっかりと人生を歩んでこなかったんだろう」

 自らの過去を省みることは、今後、新しい人生をやり直すことができるのであれば、前向きな作業にもなり得る。しかし、私はシリアで何者かも分からない武装した連中に拘束された。生きて帰れる保証はどこにもない。日本に残してきた妻や家族にも心配をかけてしまった。そんな状況下で、性格、人間関係、趣味……。私の思考回路は、「安田純平」という人間を構成する全ての要素を否定するほうへと、落ち込んでいった。そうやってひたすらに後悔を重ね、精神的に疲弊していった。

 だが、拘束からちょうど3年4カ月を迎えた2018年10月22日、私は突然、解放された。

 日本に帰国すると、私は多くの方から批判を受けた。拘束された原因が私の「迂闊なミス」にあるのは事実である。それによって日本政府を「当事者」としてしまったこと、多くの方々に迷惑をかけたことについては、真摯に反省している。同時に、解放に向けて尽力いただいた方々、心配をいただいた方々には、深く感謝を申し上げたいと思う。

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source : 文藝春秋 2019年1月号

genre : ライフ 社会 国際