地獄だった──武装勢力に身動きを禁じられ、目の前で囚人の拷問が行われる。
生ゴミのような食事を出され、体は骨と皮だけに…私の精神は狂う寸前だった
拘束されている間、私の脳裏では、これまでの自分の人生における負の側面ばかりが、走馬燈のように回り続けていた。
「俺は一体どこで間違えてしまったのか。どうして、もっとしっかりと人生を歩んでこなかったんだろう」
自らの過去を省みることは、今後、新しい人生をやり直すことができるのであれば、前向きな作業にもなり得る。しかし、私はシリアで何者かも分からない武装した連中に拘束された。生きて帰れる保証はどこにもない。日本に残してきた妻や家族にも心配をかけてしまった。そんな状況下で、性格、人間関係、趣味……。私の思考回路は、「安田純平」という人間を構成する全ての要素を否定するほうへと、落ち込んでいった。そうやってひたすらに後悔を重ね、精神的に疲弊していった。
だが、拘束からちょうど3年4カ月を迎えた2018年10月22日、私は突然、解放された。
日本に帰国すると、私は多くの方から批判を受けた。拘束された原因が私の「迂闊なミス」にあるのは事実である。それによって日本政府を「当事者」としてしまったこと、多くの方々に迷惑をかけたことについては、真摯に反省している。同時に、解放に向けて尽力いただいた方々、心配をいただいた方々には、深く感謝を申し上げたいと思う。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2019年1月号