著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、柴崎友香さん(作家)です。
仕事と母と
今、BSで「あぐり」の再放送をしている。90歳を過ぎても美容師の仕事を続けていた吉行あぐりさんの姿をテレビで見るたび、あぐりさんみたいに何歳になっても美容師を続けるのが夢だと母は言っていた。
広島生まれの母は、中学卒業後からずっと美容院で働き、結婚を機に大阪に移ってからも仕事を続けた。わたしと2つ下の弟は、創設1年目の保育園に入った。ときどき、時間を過ぎても迎えの来ない子供が何人かいて先生たちの部屋で待ったが、特別な時間を楽しむ感じでさびしいと思ったことはなかった。
母が念願の店を持ったのは、わたしが小学校1年生の秋。80年代の景気のいい頃で、商店街に近いお店は、地元のお客さんで賑わっていた。店をよく手伝っていたわたしは、当時の流行りのソバージュヘアや成人式のお姉さんたちの華やかな着物を鮮明に覚えている。
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source : 文藝春秋 2021年6月号