著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、ウスビ・サコさん(京都精華大学学長)です。
アフリカのマリ共和国で生まれた私は、幼少期を首都・バマコで過ごした。税関職員の父、専業主婦の母、妹と弟と私という5人家族だったが、当時の実家には他にも大勢の人間がいた。父方の祖母、伯母、従兄弟のような近い親戚から、親戚の知り合いの知り合いというよく分からない人まで、20~30人ほどの人間が我が家で生活をしていたのだ。これはマリでは珍しいことではない。
家では父は寡黙だったが、“絶対的な存在”だった。こんな事件があった。一緒に住んでいた従兄が、何か気に入らないことがあったようで家出をしたのだ。2~3日経ってから戻ってきた従兄に父は、「あなたはもうこの家には必要ない」とだけ言った。父が決めたことを誰も覆すことは出来ない。住む場所がなくなり困った従兄は、他の親戚を片っ端から当たったようだった。親戚から家に交渉の連絡が来ることもあったが、結局、父が話に応じることはなかった。
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source : 文藝春秋 2021年6月号