タイは今や日本経済の生命線。この市場を中国、韓国、米国が虎視眈々と狙っている
「タイは今や日本経済の生命線です。日本の自動車メーカーはタイでの稼ぎがどんどん大きくなり、収益依存度もますます高まっている。もしこの国の市場を他国に奪われるようなことになれば、とんでもないことになります。日本企業はタイに直接投資をして工場を作り、現地で雇用を生むのにも貢献している。日本という『旗印』の下で、日本勢でこの牙城を守っていきたい」
こう意気込みを語るのは、トヨタ・モーター・タイランド(以下、トヨタ・タイ)の棚田京一社長だ。
中国経済の急成長に陰りが見えるなか、ASEANは人口が増え続け、今後の経済成長が見込める「最後の楽園」と言っても過言ではない。その中心国がタイであり、そのまた中心産業が自動車である。
タイにおける2012年の国内自動車販売は、1位トヨタが78%増の約52万台、2位いすゞが61%増の約21万台、3位ホンダが2倍の約17万台、4位三菱自動車が98%増の約13万台、5位日産自動車が79%増の約12万台――トップ5は日本勢が独占し、日本車のシェアは90%近い。強敵である韓国・現代自動車は約5000台、独フォルクスワーゲンにいたってはわずか約800台しか売れていない。
トヨタの連結決算のデータも、棚田社長の発言を裏付けている。
2013年2月にトヨタが発表した第三・四半期決算では、本業の儲けを示す営業利益が前年同期比約7倍の8185億円まで伸びた。このうちアジアが占める割合は35%に達する。その主力がタイ事業だ。
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source : 文藝春秋 2013年06月号