「平和ボケ」日本はウクライナで目覚めよ

この国をいかに守るか

小泉 悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授
ニュース 社会
小泉悠氏

 2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始してから、1年近くになる。私はロシア軍がここまで杜撰な計画で戦争をするのを初めて見た。プーチンにとって最大の誤算は、予想を上回るウクライナ側の頑強な抵抗だろう。

 その抵抗を可能にしたのがNATO加盟国を始めとする周辺諸国の軍事的・経済的な支援であり、とりわけ大きいのがウクライナの隣国・ポーランドの存在である。ポーランドは対ロシアの「最前線基地」として機能しており、さらにウクライナからの難民も大量に受け入れている。

 ロシアはたびたび「ポーランドからウクライナに向かう軍事支援物資が攻撃を受けたとしても国際法上は合法だ」などと脅してきたが、ポーランドは「ウクライナを見捨てない」という立場を貫いている。

 こうしたウクライナを取り巻く情勢は、日本の安全保障にとっても、非常に重要な示唆を与えてくれている。というのも、将来的に日本がポーランドのような立場に置かれる現実的なシナリオがあるからである。

 私は現在の日本が戦争に巻き込まれる可能性は、冷戦時代よりも高いと考えている。なぜなら冷戦時代の「主戦場」はあくまで欧州だったが、現在のアジアには、米国と肩を並べる超大国となった中国がいて、さらに北朝鮮もいて、その情勢は非常に複雑化しているからだ。

 もっともあり得べきシナリオは、「台湾有事」。中国にとっての台湾は、ロシアにとってのウクライナに似ている。かつては自国の一部でありながら、現在はアメリカとの距離が近い国。「この国(ウクライナや台湾)を併合しなければわが国は完全体にはならない」という思想を、ロシアも中国も持っている。

 ロシアが行動に踏み切った以上、中国がそうしない保証はない。もし中国が台湾に侵攻した場合、アメリカは直接台湾に軍隊を送るか、武器や中国側の軍事情報を渡したりという間接的な支援を行うだろう。当然、アメリカの同盟国たる日本も巻き込まれざるを得ない。というより、まさにウクライナにおけるポーランドのように、地理的に日本が「最前線基地」となる可能性が非常に高い。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 社会