著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、永田紅さん(歌人・細胞生物学研究者)です。
「うまこさん」は、父の顔が長いから、と母がつけたニックネーム。馬ほどは長くもなかろうが、兄と私の子どもたちも、祖父を「うまちゃん」と呼ぶ。
「うまちゃん」は、歌人で細胞生物学者の永田和宏。同じく歌人の母河野裕子によると、出会ったころは「試験管の中に蒸留水が立っているような」純粋で世間ずれしていない感じだったらしく、「葉牡丹を見てキャベツと言った」「サンマとイワシの区別がつかない」というのが母の口癖だった。そんな生活能力のなさそうな父だが、10年前に母が亡くなった後、仕事は愈々(いよいよ)多忙になったものの、感心に法蓮草のお浸しなどを作っている。40年同じセーターを着ているのに気がつかない無頓着さは、やはり変わっていないか。このコロナ禍の在宅勤務の間、洗濯物を天日で乾かす心地よさに目覚めたらしい。天気のよい日、家中のカーテンを洗い、布団を干したと嬉しそうに連絡が来る。
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source : 文藝春秋 2020年7月号