日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。
★ニトリ増収増益宣言の衝撃
百貨店など小売業が悲鳴を上げる中、ニトリホールディングス(似鳥昭雄会長兼CEO)が超強気の決算見通しを出した。4月6日に発表した21年2月期の会社計画は売上高6532億円(前期比1.7%増)、経常利益1133億円(同3.4%増)。達成すれば、34期連続の増収増益。しかも似鳥会長は「さらなる上振れもある」と示唆し、先行きに強い自信を示したのだ。
上半期(20年3月〜8月)は新型コロナによる来店客減の影響が続き、既存店売上高はマイナスと想定。ただ、下半期(9月〜21年2月)は同1%増とプラスに転じると見る。インターネット通販サイトや女性向け衣料などが伸びて、通期の増収増益を確保するシナリオだ。
強気の背景には、3月度(2月21日〜3月20日)の既存店売上高が前年同月比10.9%増となり、客数も13%増となった点がある。新型コロナの影響で、消費行動に変化の兆しが見えたのだ。外出自粛で、家で過ごす時間が長くなったため、消費者の志向が「家の中」に向かった。ニトリで3月によく売れたのは、収納付きベッドフレーム家具や、新生活向けの家電。コロナ禍がもたらした「巣ごもり消費の拡大」がニトリの強気を支えている。
不安要素は商品の約9割を東南アジアや中国など海外で生産している点だ。「一時的な出荷停止はあったが、現在のところサプライチェーンに大幅な遅延は起きていない」(白井俊之社長兼COO)。製造拠点が集中しているベトナムでは外出禁止令が出ていたが、「工場の稼働停止命令はなく、ニトリの生産工場はすべて稼働している」(武田政則取締役)。それでも、マレーシアやインド、バングラデシュなどでは、行政の指導で工場の稼働が止まっており、「新型コロナの影響は見通しきれていないところがある」(白井社長)とする。「ピンチをチャンスに変える準備はしてきた」と断言した似鳥会長がどう動くか、今後に注目だ。
★航空大手統合の可能性は
新型コロナウイルスの感染拡大が大手航空会社の業績に及ぼす影響の大きさが鮮明になってきた。業界首位のANAホールディングス(HD、片野坂真哉社長)の連結最終損益は、20年1〜3月期には594億円の赤字になった。4半期としての赤字額は開示を始めた03年度以来最悪となる。本業のもうけである営業損益は596億円の赤字。ライバルの日本航空(JAL、赤坂祐二社長)は200億円の営業赤字だ。
航空業界は2月後半から世界各国が入国制限をし、全日本空輸(ANA、平子裕志社長)の国際線は9割超の減便。国内線も、4月は5割の減便で、収入は激減した。
手元資金は3000億円あるが、このまま収入減と固定費負担増が続けば、数カ月で手元資金が枯渇し、資金繰りが破綻しかねない。コロナ禍がさらに長期化すると、ANAもJALもともに立ち行かなくなるのは必至で、否応なしに両社統合の可能性が浮上してくる。
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source : 文藝春秋 2020年6月号