いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
2025年の出版界で特筆すべき話題のひとつは、「言語化」をテーマにした書籍が多く刊行されたことです。「言語化」に関する議論も活発でした。
前年には、三宅香帆『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー携書)、荒木俊哉(しゅんや)『こうやって頭のなかを言語化する。』(PHP研究所)などの著書が出版されました。25年に入ってからも、齋藤孝『最強の言語化力』(祥伝社新書)などが続いています。

こうした傾向は2023年頃から見られましたが、25年にはついにブームの域に達したと言えるでしょう。書店を覗(のぞ)くと、「言語化」の広告が明らかに目につくようになりました。
各種の企画も盛んです。書店主催で「言語化」に関するオンラインイベントが開かれたり、大学の学生向けサイトの特集で「言語化」をめぐる座談会が行われたり。私自身も、テレビ東京の番組「円卓コンフィデンシャル」(9月13日)で、「言語化」関連書籍の著者たちと討論に参加する機会を得ました。
「言語化」といっても、べつに難しい概念ではありません。要は、思ったり考えたりした内容を「ことばにすること」です。「ことばにする」「ことばにまとめる」よりも「言語化」のほうが短く言えます。このテーマを論じる機会が増え、短い用語が必要となったのです。
「言語化」という用語自体は100年以上前からあり、特に戦後に使用が増えました。ただ、学術的な響きのあることばでした。〈同一の「浅層的」な単位でもそれを言語化する仕方は一通りとは限らない〉(池上嘉彦『意味論』1975年)のような硬い使い方が主流でした。
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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

