国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです
2025年の夏は、北海道でも38~39度を記録するほどの猛暑になりました。そんな中、『毎日新聞』7月22日付夕刊「近事片々」に〈列島沸騰。国語辞典からいずれは消えるか「避暑地」〉というつぶやきが記されました。
国語辞典を作る立場としては、異常な暑さもさることながら、「避暑地」が辞書から消えるか、というのは重要な問いかけです。「近事片々」の筆者の冗談だとは分かりますが、実際にはどうなるか、考え込んでしまいました。
「避暑」ということば自体は古代からあり、暑さを避けること全般に使いました。一方、「避暑地」は古い文献には見えません。近代的な概念です。
1889年刊行の『和訳独逸字彙』には、Sommerfrischeの説明として〈別荘、避暑地〉という訳語が載っています。この頃には一般に知られるようになっていたと思われます。
軽井沢に避暑別荘が造られたのも同時期、1888年でした(石井研堂『明治事物起原7』ちくま学芸文庫)。イギリス人A・C・ショーによるもので、彼を〈始メテ吾ガ軽井沢ヲ以テ避暑地ト為ス者〉とする記念碑もあったそうです。
その軽井沢の平均気温は、1925年の7~8月には17~19度台でした。それが、2020年代になると22度を超えることが多くなっています(気象庁ウェブサイト)。もちろん、年によって少なからぬ変動がありますが、平均気温が長い目で見てじわじわと上がりつつあるのは確かです。最高気温では30度を超えることも珍しくありません。「避暑地」も暑くなってきています。
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source : 文藝春秋 2025年10月号

