国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです
私の文章をAI(ChatGPT)に読ませて、点検してもらうことがしばしばあります。「もしかして、私の代わりに書けるんじゃないですか」と尋ねると、即座にコラムを生成してくれました。
それは「傘を差す」の意味についての文章で、およそこんな内容でした。
――ナイフをさす、針をさすと言います。傘の場合、もっと穏やかな動詞を使ってもよさそうです。おそらく「さす」は、雨との間に一線を引く感覚があるのでしょう。外界との距離感を保つ、日本語の知恵なのかもしれません――
私の文体に似ていますが、なぜ「差す」が「一線を引く」ことになるのか分からない。こうなると、「傘を差す」の意味を私自身で説明したくなります。
漢字では「差す・射す・指す・刺す……」と書き分けますが、大元は「さす」という一つのことばです。
『岩波古語辞典 補訂版』の説明を私なりに解釈すると、「さす」は目標の一点へ直線的に向かうことらしい。「光が差す」「枝が差す(=伸びる)」なども、一方向に直線的に向かう意味です。「頰に赤みが差す」も、光が差すようにその色が現れるイメージでしょう。
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