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アンチ巨人・久米宏さんが西川美和さんとの対談で明かした、読売グループとの“手打ち式”

編集部日記 vol.57

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「巨人とは、実は『ニュースステーション』を辞めてしばらくして、手打ちをしたんですよ」

 対談中にそんな話を披露してくれたのは、フリーアナウンサーの久米宏さん(79)。

 久米さんと言えば、2020年6月に『久米宏 ラジオなんですけど』(TBSラジオ)が終わり、2021年5月にはインターネット動画『久米*ネット』の配信も休止に。以来、メディアに登場する機会も減っていましたが、今回、映画監督・西川美和さんとの対談ということで、『文藝春秋』7月号にご登場いただきました。

 お二人は共に“広島カープ好き”。そんな縁もあり、久米さんのラジオに西川さんが出演したり、西川さんの作品に久米さんがコメントを寄せられたりしていただけでなく、カープが「思わぬ連勝をしたら浮かれてメールのやり取りをし、連敗すると互いに沈黙する……という関係」(西川さん)とのことです。

 冒頭の発言は、そんな二人の野球トークの中で、久米さんが「実は」と明かしたものでした。多くの方がご存じだと思いますが、久米さんは「アンチ巨人」、「アンチ読売」で有名です。取材時にも、こんな会話がなされていました。

西川 1989年の開幕前、『ニュースステーション』で糸井重里さんら巨人ファンを前に「もし巨人が優勝したら、丸刈りになる」と宣言したら、本当に優勝してしまって、実際に坊主になったのも有名ですし。
久米 あの頃は超アンチ巨人のコメンテーターもいてね。今では信じられないですが、生放送中に、ある選手を名指しで「本物のバカだ」と言ってしまったこともあったほどでした。
西川 久米さん世代は巨人全盛期で、アンチは珍しいですよね。
久米 自分でも理由はよく分かりませんが、根っから嫌いだったんでしょうね。王貞治さんや長嶋茂雄さんも、学生時代は普通に応援していましたが、巨人に入って嫌いになった程ですから。

 テレビ朝日の高視聴率番組『ニュースステーション』で「アンチ」を公言していただけに、実際、読売グループからも目の敵にされていたようです。

 読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡邉恒雄氏は1991年12月27日、FA制導入に前向きなことについて新聞記者に問われ、「オレの大嫌いな久米宏だって賛成してるんだ」と発言(『日刊スポーツ』1991年12月28日)。渡邉氏が匿名で執筆していた『This is読売』(読売新聞社)の巻頭コラムの中で、久米さんのキャスターとしてのスタイルを批判する記事を取り上げたこともありました。

 一方で久米さんも渡邉氏に対して“口撃”したこともありました。2004年9月20日、ニッポン放送開局50周年と社屋の有楽町移転を祝して、番組ジャックをした時のことです。当時、盛り上がっていたプロ野球のスト問題に関連して「野球チームは、もう経営者のものじゃない。文化だし、もっと地域のものと考えないと。新規参入を認めない世界は衰退するしかない」と懸念を示した上で、渡邉氏に「(オーナーを)辞めたと言ったんだから、早く引っ込んだほうがいい」と言ったのです。

 両者は長年にわたり、因縁の関係にありました。それゆえ、久米さんが『ニュースステーション』のキャスターを辞めた後、読売グループのある人物から接触があったというのです。

「『お互いの関係を平らにしたい』と言われて、読売グループのお偉いさんと料亭で食事をしました。アンチ巨人と言っているのは、半分冗談なんですけど、先方は本気で気にしていたんですね」(久米さん)

 これまで、久米さんと読売グループとの「手打ち」が公になったことはありません。いま明かされる衝撃のプチスクープ。取材現場にいた私も思わず身を乗り出して、話に聞き入ってしまいました。

 今回の記事では、このほか、『ニュースステーション』の生放送中に大物ハリウッド俳優が激怒した事件、『ザ・ベストテン』の特番で黒柳徹子さんに言われた驚きの一言、いま久米さんが話を聞いてみたい女性政治家の実名、西川さんが久米さんのラジオに出た時の裏話など、貴重なエピソードが満載です。ぜひ脳内で久米さん、西川さんの語り口を想像しながら、お二人の対談『たかがテレビじゃないか』をお楽しみください。

(編集部・柳原)

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : エンタメ メディア スポーツ