マギー・ホーン著 三辺律子訳「はなしをきいて 決戦のスピーチコンテスト」

奈倉 有里 ロシア文学者
エンタメ 読書

中学生だった私がいる

 主人公のヘイゼルはミドルスクールの2年生。日本でいう中学生にあたる。帯や表紙の雰囲気からは、いまどきの(アメリカの)中学生がなにを考えているのかわかる本、という印象を受けていたのだけれど、読んでみて「あれっ」と思う。そこには、かつての私がいたからだ。

 私が中学生だったのは30年ほど前で、この本の中心的話題のひとつにもなっているSNSやスマホもなかったし、LGBTQやハラスメントという言葉も聞いたことがなかったから、そういう意味ではもちろんなにもかも同じじゃない。それでもこの本の、そして見事な翻訳のすごさは、主人公の生きる世界を「へえ、そんな感じなのか」と把握しようとするというより、ごく自然に「思いだせる」ことだと思う。自分自身が理不尽なことに腹の底から怒って、がんばれることを探して全力でがんばってみていた、そのときの状態を。

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source : 文藝春秋 2024年11月号

genre : エンタメ 読書