中曽根康弘(1918〜2019)は、衆議院議員として56年にわたり在職。昭和57(1982)年に総理大臣に就任すると、5年間の長期政権を築き、国鉄や電電公社、専売公社の民営化など行財政改革を推進した。その功績から生前に「大勲位菊花大綬章」を授与された。
政治学者で東京大学名誉教授の御厨貴氏は、11年半にわたってキャスターを務めた日曜朝の名物番組『時事放談』(TBS系)などで、何度も語り合った仲だ。
中曽根さんが『時事放談』に出演する日に限って、スタジオのテーブルに小さなテープレコーダーが置いてありました。上手くしゃべれたかどうか、帰りの車で聞いて確認するために、自分で持って来るんです。考えや意見をどうやって伝えるかということに意識的だったし、研鑽を怠らない人でした。
しかし生真面目すぎて冗談が面白くないので(笑)、中曽根さんが出るからといって視聴率は上がりません。必ずコンビで出ていたナベツネさん(読売新聞の渡邉恒雄主筆)見たさの人が、多かったと思います。ナベツネさんとはいつも「次のゴルフはいつにするか」と相談していて、2人とも秘書を通したりせずに手帳と睨めっこしていました。あの2人は本当に仲が良かった。
中曽根さんは、現役時代は土日になると必ず、昭和58年にレーガン大統領を招待して日米首脳会談を行なった奥多摩の日の出山荘へ行っていました。週末は地元へ帰るのが政治家の常ですから、理由を訊いたところ、
「総理になったら年がら年中情報が入ってくる。すると、何か大事なことを忘れているような気がする。それを取り戻すために、1人になる時間と静寂が必要なんだ」
電話に拘束されるのも嫌って、別棟に置いていました。谷中の全生庵で座禅を組んだのも、静寂の時間を得るためです。とかく群れたがるのが政治家の習性ですから、きわめて珍しいタイプだった。
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