自民党幹事長や副総裁など要職を歴任した金丸信(1914〜1996)は、最大派閥竹下派の会長も務め、「キングメーカー」として時の政権を動かしてきた。時事通信政治部記者として田中派や竹下派を担当し、金丸に深く食い込んでいた田﨑史郎氏がその素顔を綴る。
その全盛期、「昭和の武田信玄」と呼ばれた政治家がいた。衆院山梨全県区選出の金丸信だ。
金丸は昭和58(1983)年10月、ロッキード事件における田中角栄(元首相)に対する東京地裁有罪判決の前後から力を強め、同60年2月7日、竹下登(元首相)を担いで田中派内に「創政会」を結成。その20日後、田中は病に倒れ、「田中不在」が長引くのに比例して金丸の存在感は高まった。その力は東京佐川急便からの5億円献金事件で失脚する平成4(1992)年夏まで続いた。最後は「天下の大悪人」になってしまったが、金丸は昭和終盤から平成に至る政治の舞台を回した。
金丸に竹下が付けたあだ名は「アバウト」。細かい数字までよく覚えている竹下に比べ、金丸はまさに大ざっぱだった。数字は平気で間違え、名詞も平然と「バラバラ(パラボラ)アンテナ」、「リビア(リニア)モーターカー」などと言った。
今どきの政治家は政策に精通し、論理的に話す人がほとんどだ。実によく勉強し、官僚を凌駕する人もいる。それに対し、金丸は勉強している風はなく、国会近くの事務所に毎日出てきても、午後は仲間の議員を呼び出し、マージャンに明け暮れた。
そんな金丸が政界でのし上がったのは強固な人間関係を築いてきたからだ。「人間関係を大事にする」のがモットーで、信玄公の事績を記した軍学書「甲陽軍鑑」の一節を好んで用いた。
「人は城 人は石垣 人は堀」
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