官房長官や大蔵大臣を歴任し、総理として沖縄返還を実現させた佐藤栄作(1901〜1975)。阿達雅志参議院議員の妻で、佐藤の孫の阿達実花氏が祖父との秘話を明かした。
私にとって祖父の佐藤栄作は、「優しいおじいちゃま」でした。
寡黙だったことから、総理大臣としての祖父は、「近寄りがたい」「気難しい」印象を持たれがちでした。でも、孫の私たち姉妹と一緒にいる時は、いつも穏やかな表情で、優しいまなざしをしていました。
週末は大抵、祖父の自宅や首相公邸に行き、一緒に食事をしました。夏休みには軽井沢の別荘で過ごすことが多く、庭に生えているキノコを穫ったり、花火をしたり。祖父の「はっは!」という笑い声は、私の耳に心地よく残っています。
祖父は子供好きでした。自宅前を通った小学生によく声を掛けており、ファンレターを貰えば嬉しそうに読み、大事に保管していたほど。私は「総理大臣の孫」という目で見られることが嫌で嫌で仕方がありませんでしたが、祖父のことは子供心に立派な人だと思っていました。
普段接する中でも、祖父を「おじいちゃま」ではなく「総理大臣」と認識する瞬間もありました。家族との食事が終わり、夜7時になると、必ずひとりでNHKのニュースを見ていたのです。その時の祖父は怖いほど真剣な顔つきでした。また、車の窓が分厚い防弾ガラスであることを知り理由を尋ねると、こう返されました。「総理大臣はね、命懸けの仕事なんだよ」。私たちに見せる穏やかな表情の裏で、本当に大変な思いをしているのだと痛感しました。
実際に祖父は、本当に命を懸けて仕事をしていたと思います。沖縄返還への尽力がまさにそうです。
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