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『ブラック・クランズマン』は『シン・ゴジラ』的映画だ

『グリーンブック』が“有効”な映画である理由

2019/03/31
note

二つの作品をさっとおさらい

「いやいや、あらゆるジャンルに貴賤なし。怪獣映画だって実は深いよ。エンタメに徹した怪獣映画の方から、『グリーンブック』『ブラック・クランズマン』に光を当てることで、見えてくるものもあると思うで」

「こじつけのような気もするけど、まあいいか。例によって色々と語りたいんでしょう?」

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「そういうこと。まずは二つの作品をさっとおさらいしようや。『グリーンブック』は1962年、ニューヨークのナイトクラブで用心棒をしていたイタリア系白人トニーが一時的に失職。天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーに運転手兼トラブル解決屋として雇われ、人種差別の激しい米国南部のコンサートツアーを一緒に回ることになる。平気で黒人差別をしていたトニーだったが、次第にシャーリーの人間性を認めるようになり、人間不信が強かったシャーリーも、トニーに心を開いていく」

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「立場も境遇も性格も異なり、反発しあう2人が、様々な困難に共同で立ち向かう過程で、次第に絆を深めていく。バディもののお約束的な展開ですよね」

「そうそう。こういう映画は本来、テーマ性を論じるよりも、2人の軽妙なやりとりや、捻りの利いた展開を楽しむのが筋ってもんや。ところが、トランプ政権の登場による人種間の分断と映画の製作・公開時期が重なったもので、すごく政治的・社会的な文脈で観られ、語られるようになってしまった、というところやろう」

「一方の、『ブラック・クランズマン』は差別問題にまっこうから切り込んだ映画ですね」

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「舞台は1970年代半ばの米国コロラド州コロラド・スプリングス。街で最初の黒人警察官となったロン・ストールワースは、白人至上主義の秘密結社『クー・クラックス・クラン(KKK)』の連絡先を記した新聞広告に目を止め、黒人を憎む白人男性のふりをして電話。応対したKKKの地方支部長から気に入られ、直接会う約束を取りつける。ロンは当然、直接会うことができないので、白人刑事のフリップがロンになりすましてKKKの会合に参加。ロンは電話で幹部との対話を続けて内情を探るという『2人で1人』の奇妙な潜入捜査が始まる」