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特集観る将棋、読む将棋

2019/04/26

九州出身の棋士は間違いなく増えると思いますよ

 軽妙に語る豊川七段だが、藤井聡太との対局を振り返るときは、ポツポツとことばをつないだ。それはギャグの話をするときとは明らかに違うトーンで、現役棋士としての気概が強く感じられた。

 豊川七段は、中田功八段、関口武史指導棋士五段とともに2016年1月に発足した九州研修会の幹事を務めている。「研修会」は、プロ棋士の養成機関である「奨励会」の下部組織とされ、ここから巣立つプロも数多い。自身の対局もあるなか、どういった想いで指導に当たっているのだろうか。

現在は福岡市に居を構え、対局や解説の仕事では東京・大阪に移動している

――まず九州研修会が発足した経緯を簡単に教えてください。

豊川 対局場が東京と大阪なので、地方在住の棋士って少ないんですよ。移動も大変ですからね。ただ、たまたま福岡に中田功と、僕がいて、佐藤天彦名人も福岡出身。そして九州経済界が熱心で、バックアップしてもらったというのも大きいです。いろんな縁があってできた感じですね。

――これで九州からプロ棋士がたくさん出るのではと期待されていますね。

豊川 間違いなく増えると思いますよ。研修会では、プロとも一対一で指しますからね。僕も多いときは1日で4局ほど子どもと対局しますが、こういった経験で本当に伸びますから。

負けたときって引きずるんですよ

――とはいえ普及や指導は、なかなか大変なことだと思うのですが、その活動の原動力はどういったところにありますか。

豊川 人に教えるというのは、自分の勉強にもなるんですよ。子どもは経験がないだけで能力はすごい。そんな子どもたちの強くなる過程を見られるのは、心洗われるものがあります。将棋って半分くらいは負けるじゃないですか。負けて落ち込んでいるときも、指導で人と接することで元気をもらえるんですよ。一人ぼっちでやっていると、負けた次の日とかアルコールまみれですよ。でも次の日にレッスンがあるとアルコールの量も控えるし、気持ちも立て直せるんです。

明け方まで対局を行ってから指導に向かうこともあるという

――やはり今でも1局負けるというのは?

豊川 いやぁ、きついですよ。でもそれがなくなったらおしまい。「将棋指しが将棋でものわかりがよくなったら終わり」という言葉があるんですが、本当にそう思うんです。負けたときって引きずるんですよ。勝ったときは嬉しいというより、ほっとする感じですね。棋士は、勝つことが生活にもつながっていますからね。