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 これを見て、小泉進次郎さんは平和の使者だなと思うのは、いままでアベ死ねだアベ万歳だと左右に分かれてお互いを罵倒し合っていた日本人が、左も右も肩を組んで共に「小泉進次郎バーカ」と騒げるという日本社会の一致団結を促したという点でありまして、これはもうノーベル平和賞級であります。

修羅場の経験をしてこなかったんじゃないか

 いままで、小泉進次郎さんは本当の意味で存在を疑われたり、悪意を持った人から逃げられない環境で詰められた修羅場の経験をしてこなかったんじゃないかとすら思うんですよね。褒められ、おだてられてずっとやってきたのかもしれない。だから、みんなから好かれることを当たり前でやってきたところへ、正面から馬鹿にされて、ますますおかしいことを言うようになってしまっているように見えます。

 サッと話してパッと去るパフォーマンスぐらいでやり過ごしてきたことで、溢れ返る敵意の中で自分の意見をしっかり伝えるという訓練をしてこなかったのだとするならば、この環境大臣というポストは本当の意味で小泉進次郎さんが一皮剥けて躍進する場になるのか、あるいは完全に馬脚を露して首相レースどころではない凡庸な選挙集票マシーンとなるのかの分かれ道になるんでしょう。

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 大臣のポストを受ける前に、別のところでトレーニングしておいてほしかった、という気持ちはないでもないですが。

環境相として初入閣を果たしたが…… ©AFLO

 その点では、学歴以外は完璧な男とされた小泉進次郎さんの真価というのは、その本人の事務処理能力的な中身だけで評価してはいけない部分はあります。まわりに価値のある人が集うよう選別し、重要な情報はきちんと集約をしながら、政治的判断(政見)を政治家として示すタイプの、オーケストラの指揮者のような存在になっていかなければなりません。

「右の小泉進次郎、左の山本太郎」みたいな、それらしいことを言い、政党が浮動票をかき集めるエンジンとなれるのであれば、要職に就いたら就いたでその仕事に俄然注目が集まるようになります。

「最高品質の置物」進次郎氏の弱点を補うもの

 山本太郎さんであれば、やはりれいわ新選組で参議院に身体障碍者を国会議員として送り込むことで、文字通り旧弊の只中にあった参議院において、参院議院運営委員会がきちんと動いて8時間の介助をサポートして、バリアフリー対策を進めるぞという動きに繋がったのは福音です。一面ではポピュリストではあるけれど、開かれた日本政治を形成するにあたっては、こういうアクションがあったからこそ「日本の政治は、開いていけるのだ」と示せたのは山本太郎さんの功績の一つです。

 掲げている政策の実現性にはまったく可能性は感じないけど、若い世代で政権に批判的な層を掘り起こし、失業者や非正規雇用の有権者を投票所に向かわせる力を持っていたのは山本太郎さんに他なりません。それまでは、共産党や旧民進党がそういう人たちの受け皿であったものが、野党へのおおいなる失望でれいわ新選組に若き浮動票が移ったのはもっと理解されるべきことです。

©iStock.com

 一方で、小泉進次郎さんは選挙集票マシーンと言いつつも、実際に党務で汗をかいている局面においては評判こそ芳しくなかったものの議論の道筋を一応は示した「こども保険」や、ほとんど小泉進次郎さんがそこにいるだけで仕事になったような感じの福島復興事業関連では、ある程度見聞きしている人たちにとっては「ああ、それでも小泉進次郎も何となくそういうことをやりたい人ではあるんだな」というポジティブな認識にはなっていたと思います。

 会議ではほとんど私見を述べず、要所要所で一言口をはさむ程度の「最高品質の置物」となっていた小泉進次郎さんの一番の問題点が「理解能力の欠如からくる不勉強」だとするならば、その弱点を補うために「まわりに優秀な人物を集めて知恵を出させ、判断をしてその結果を納得させるために己のカリスマ性を使う」方法以外にないと思うのですよ。