1ページ目から読む
2/2ページ目

「試合終了でございます」に充実感

 印象に残っている試合は数多いが、いつも口にするのは01年7月9日のホークス戦。同点で迎えた延長十回表にホークスの大道に3ランを打たれて万事休すと思いきやその裏、ペドラザから小坂、サブロー、福浦がつないで無死満塁の場面でボーリックが満塁本塁打でサヨナラ勝ちした試合だ。「ものすごい歓声だった。まずホークスファンが沸いて、最後にマリーンズファンが狂喜乱舞。忘れられない」と振り返る。

 ヘビメタ好きだった初芝清もこだわり溢れる人だった。まずは名前をコール。終わるやいなや登場曲であるノリノリのヘビメタの曲をかける。独特の世界観を持っていた。選手には、みんなそれぞれにルーティンがある。それが狂わないように今も一定を意識している。

「私は試合の進行係。始まって『試合終了でございます』と言える瞬間に充実感を感じます。やはりZOZOマリンスタジアムで胴上げのアナウンスをしてみたいですね。05年も10年もビジターですから。やっぱり他の球場のを聞いていると『優勝でございます』とアナウンスをしている。たぶん、大歓声にかき消されて聞こえないと思うけど『マリーンズ 優勝でございます』とマイクの前で伝えたいです」

ADVERTISEMENT

 アナウンスをしながらも選手のポジション、打順、交代などが分かりやすいように必ずスコアブックをつけている。そして、これまでつけたスコアブックは全部、大切に保管している。「すごく汚く書いているけどその日の感情が残っている。見るだけで、その場面を思い出せる。いろいろな事もメモをしている」。

 その数はゆうに50冊を超えている。今思えば、野球大好き少女だった高校時代に野球をテレビ観戦しながらスコアブックをつけるのが楽しみだった。その光景に母からは「スコアブックをつけても、なんの役にも立たないからやめなさい」と口酸っぱく言われた。しかし、今ではその業務こそが誇りある仕事の大事な一部となっているのだから、人生は分からない。そしてマリーンズファンにとってその美声はマリーンズそのものとなっている。これからもファンに野球観戦を楽しんでもらうために明るく元気にマイクの前に立ち続ける。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/2488でHITボタンを押してください。

対戦中:VS 日本ハムファイターズ(えのきどいちろう)

※対戦とは同時刻に記事をアップして24時間でのHIT数を競うものです。