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「人類の未来は決して暗くない」世界注目のハーバード大学教授が喝破する“ジャーナリズムの罪”

私たちはなぜ「世界の進歩」に気が付かないのか?

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この25年で12億人超が極度の貧困から脱した

「ジャーナリズムは、毎日、銃撃やテロ攻撃、内戦、飢餓、病気の大流行について報道しています。そのような悲惨なニュースを見ると、世界中がバイオレントになり、病気が流行し、貧困に向かい、危険に陥っていると思うでしょう。

 一方で、平和に暮らしている地域はニュースになりません。また、良いことは年に2、3%の割合で徐々に進み、10年、20年をかけて大きな進歩になりますが、その進歩は漸進的なので、新聞は報道しないのです。

 例えば、極度の貧困(1日1.9ドル未満で生活する人)は、この200年間で、世界の人口の90%から10%まで減少しています。しかし、『今日、13万7000人の人が極度の貧困から脱出しました』というヘッドラインを新聞で見ることはありません。この25年で12億5000万人が極度の貧困から脱したという事実に、人は気が付いていないのです」

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世界の富は200年で100倍に ©iStock.com

あなたも「フィルターバブル」に入っている

 そのようにして作られた我々の「世界に対するイメージ」を、より強固にしてしまうのが、「SNSにより作られるバイアス」だ。情報があふれるSNSへの接し方には注意が必要だと続ける。

「インターネットやSNSにおいては、自分が見たい情報しか見えなくなりがちです。それを『フィルターバブル』と言います。我々は、自分と異なる意見を持つ人々に対して『彼らはフィルターバブルに入っている』と一蹴しがちですが、あなた自身もフィルターバブルに入っていることには気が付きません」

 バイアスの影響をたやすく受けてしまう我々に必要な能力、それは「データを理解すること」だという。目の前の危機に印象論で惑わされないこと、その重要性をピンカー氏は強調した。

「調査や分析によって得られるデータから考え、自分自身の考えだけを信頼しないことを常に心に留めておくべきなのです」

 環境問題や原発、AIに対する恐怖、所得の格差――我々がおびえる問題の中で、本当に向き合うべきテーマは何だろうか。

出典:「文藝春秋」2月号

 豊富なデータを基にピンカー氏が語った「人類はもっと未来に期待すべき」は、「文藝春秋」2月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。

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人類はもっと未来に期待すべき
「人類の未来は決して暗くない」世界注目のハーバード大学教授が喝破する“ジャーナリズムの罪”

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