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集客を増やした必殺技

 まずは、解説板で新しい魅力づくり。展示生物にも水槽にもこれといった魅力がないという弱点から発想し、他の水族館では利用者の誰も読まないであろう解説板で勝負に出た。

建物内部も文化遺産並みながら、手入れの行き届いた水槽に加え、「読みたくなる」解説などが盛りだくさん。解説を読むために通っているファンもいる。

 内容もよくありがちな生物学的知識は二の次にし、食用としての知識、名前の面白さ、笑えるダジャレ、トリビア情報など、利用者の興味を惹くことを中心に変えた。

 さらに、そのほとんどをスタッフの手書きにした。実は手書き解説は、展示スタッフの気持ちが伝わることで読ませる力が強く、タイプ文字の10倍以上の人が読む。それではなぜ、全ての水族館で行わないのか? 

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ウツボには感謝状を。
ウツボ軍団。

 この裏技、新しい水族館や雰囲気重視の水族館では、手書きがヘンに主張して水塊の邪魔になるし、何よりも貧乏くさい。竹島水族館が超古いという弱点があるからこそ、効果的に使える裏技なのだ。 

 次はスタッフ自身の改革だ。それまで隠れるようにして観覧通路に出てこなかった飼育スタッフを説得して、積極的に観覧側に出て客と話をさせるようにした。 

 地元の漁業では深海生物を水揚げするため、この水族館でも沢山の深海生物の展示がある。そこで、解説板に書くネタや、利用者と話をするネタのために、ゲテモノ好きのスタッフに、展示している深海生物を片っ端から食べてみて、その味をレポートする役目を命じた。そのあまりに挑戦的なレポートはネット上でも大人気となり、テレビにも出演するほどになった。 

 予算がないため実際の展示生物や水槽にはほとんど手を付けられないが、スタッフ自身を展示物にしてしまおうというわけだ。実はこれ、私が小林門下生に伝授した裏技なのだが、彼はさらに磨きをかけ、必殺技として極めたのである。

小さくて古い水槽でも、展示を美しくする努力は怠らないのが、たけすい流。