わたしたちの塾が下した決断は……
そして、2月29日の朝、わたしは自身の経営する中学受験専門塾の営業について、次のような方針を打ち出し、塾生・保護者に配信した。
1.平常通り営業をおこなう。授業も予定通り実施する。(イベントの一部は中止あるいは延期する)
2.来塾した子どもたち・スタッフには教室に入る前に必ず消毒液による手指の洗浄をさせる。
3.来塾した子どもたち・スタッフには教室に入る前に体温を測らせ、37.5℃以上あった場合すぐに帰宅させる。
4.子どもたち・スタッフには極力マスクを携行・着用させる。
5.自習室の開放は原則おこなわないが、ご両親共働きなどの理由でその必要性がある子どもたちについては、保護者と相談の上で自習室利用を認める。
6.ご家庭のご判断で、3月1週・2週・3週に塾を休まれる場合は、ご欠席した週数分の授業料について返金する。
今回の判断は「正解」もなければ、「間違い」もない
このような判断に至った理由は、以下の点を挙げることができる。
1.此度の休校要請は、専門家の意見を入れない首相の独断である可能性が高い点。
2.保護者からの問い合わせに対応すると、塾を開けてほしいという声が圧倒的に多かった点。
3.複数名の医師から子どもについての対応策のアドバイスを頂戴し、その実行が可能である点。
4.それでも、不安を覚える保護者が「休塾」を選択した場合は、誠実な対応をしたいと考えた点。
1については別ルートから、首相表明のあとに文部科学省が騒然としていたという情報が入っていたこともある。また、2については塾生保護者に共働きの方が多く、子の預け先に途方に暮れている様子が伝わっていた。
わたしの塾は普段から平日14:00~21:55、土曜日10:30~19:25に自習室を開放していて、「学童」的な利用をされているご家庭が多いのだ。
そして、4である。わたしたちは「ライブの授業」に対して授業料を頂戴している。映像授業配信も考えたが、とてもではないがライブ授業と同等のクオリティを提供するのは難しいだろう。よって、今回の事態にご不安を抱き、塾を休む選択をしたご家庭には授業料を迷わず返金することにした。もちろんある程度の損失は覚悟の上である。
わたしのこの決定が「正解」だと思うつもりは毛頭ない。小学生という低年齢層を対象にしていて、なおかつ少人数定員制の進学塾だからこそ、このような決断にいたったという事情もある。そもそも今回は「正解」などないのだ。
実際、大手の中学受験塾の営業方針は真っ二つに割れた。たとえば、日能研は授業を休講する一方、四谷大塚は授業を実施した。繰り返すが、どの塾もその判断は間違いではないし、かといって正解でもない。
いずれにせよ、此度の新型コロナウイルスが鎮静化し、子どもたちが何の心配もなく勉学に励める日が一日でも早く訪れることを願っている。