その3)「ジャニーズを出ざるをえなかった」
「男、手越祐也、32歳。もっと男としてチャレンジしたい」と退所の理由や自らの夢、将来を語る度に何度も何度も頷く。力が入ると、言葉の語尾が微妙に上がり、声が裏返るように細く高くなる。
事務所にいては「身軽なフットワーク」で動きにくく、SNSやYouTubeなど「個人のメディア」が持てず、仕事でも「持っていったものが、具現化するのに時間がかかる」と視線を落とし、首を傾げながら説明。それを聞いていると、やりたいことが思うようにできず、仕事も行動も制限され自由が利かないことに反発や苛立ちを感じ、反抗したくなる「心理的リアクタンス」という状態だったと推測できる。「アイドルの1年って本当に大切」と自身の時間感覚や理想とする仕事のスピード感も語ったが、時間への焦りがあるほど、人はスピードアップしたくなる傾向がある。焦りもあったという32歳のアイドルの退所に、事務所は彼の理想通りのスピード感で対処した。
その4)「影響力を最大化する」
NEWSのアルバム4部作最後の「STORY」について熱く語り、そのツアーが終了したら退所するつもりだったと話すだけに、なぜこのタイミングでの退所だったのだろうか? コロナ禍で見通しがつかなくなったとはいえ、いずれ収まるのを待てばいいのに。その答えは「影響力を最大化する」という彼の野望かもしれない。
人気バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)にレギュラー出演し、広くお茶の間の人気者になった手越氏。NEWSというグループや歌は知らなくても、手越は知っているという人も多い。だとすれば、コロナ禍で様変わりした芸能界で生き残っていくため、人気があるうちに退所し個人のメディアを立ち上げた方が戦略的にはプラス。前日に開設した手越祐也チャンネルは、開始13分後に視聴者が100万人を突破。翌日、メディアはこぞってこの会見を報じた。まさに影響力の下地となる存在感を最大化できたタイミングだった。