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2020/07/22

source : 文藝春秋

genre : ニュース, 社会

3億円もの教会資金を消失させた神父

「最初に、高見大司教様から、教区本部事務局長のA神父様が、2億か3億円の教会のお金を意思決定機関である顧問会に諮ることもなく独断で投資商法につぎ込んでいて、そのほとんどが焦げついてしまったまま――という驚くべき事実が明らかにされたのです」

 日本のカトリックでは神父の名に「様」をつけて呼ぶ。中でも教区本部事務局長は、大司教から数えて3番目にあたる高位職のエリートだ。

神父による性的虐待被害を告発した竹中勝美氏(左)の求めに応じ、「実態調査」を約束した高見大司教だったが……

 A神父は現在54歳で上五島出身。1992年に司祭に叙階された後、離島の主任神父、東京の中央協議会への出向を経て、2010年から14年まで大司教区の会計を担当する法人事務所長、14年から19年1月まで事務局長を務めていた。大司教区の広報誌「カトリック教報」(19年8月号)によれば、教区本部の収入は6.6億円。その半分にも相当する巨額のお金をどのように引き出したのかは後述するが、まずは関係者の証言を続ける。

「A神父様は怪しい人物に言われるがままにお金を引き出していて、当時、大司教に助言していた弁護士は横領や背任が成立すると見ていました。ところが、大司教区はA神父様の事務局長職を解く一方、被害届は出さない、その代わり、A神父様には自首させる、という方針を決めた。A神父様は当初、受け入れていたにもかかわらず、地元警察署に行く段階になって一転、『教会のためにやった』と手のひらを返してしまった。被害届も出さず自首もしないので犯罪として成立しない、というなんとも後味の悪い結論でした」

突然、壇上で糾弾された女性職員

 研修会はこの後、A神父に悪意はなく高見大司教が責任を問われることもない――そう暗黙のうちに確認し、神父サイドを正当化するかのように、“犯人探し”を始めた。

 それが冒頭の女性室長へのパワハラだった。

「A神父様が『自分の自由になる金だと思っていた』と弁解した、と高見大司教様は説明したのですが、その言葉を引き取ったのがナンバー2の司教総代理の神父様でした。A神父が取り調べと前後して書いた弁明の手紙を手に『A神父は〈自分の裁量(権限)のある金だと思っていた〉という言い方をしたはず。彼を貶めるため、意図的に事実と違う言い方を使って高見大司教様に伝えた者がいる』とおっしゃった。その可能性があるのは警察の取り調べに付き添っていった女性室長しかいない、と」(前出・関係者)

長崎・平和記念公園 ©iStock.com

 前出の神父が補う。

「A神父の行為は犯罪と見る弁護士を連れてきたのが、人権分野での大司教の相談役だった女性室長。シスターではなくケースワーカーの経験を持つ信徒です。彼女は常識的な行動を取っただけなのに、司教総代理は、“一信徒が神父に反旗を翻した”という構図にすり替えてしまった。突然、壇上で糾弾されることになった女性職員は『私には味方がいません』と消え入りそうな声で話していた」