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退職者続出 陸自の第1空挺団長は“パワハラ”常習者で通称「ハカイダー」

退職者続出 陸自の第1空挺団長は“パワハラ”常習者で通称「ハカイダー」

部下全員の貯金やローン額について書類提出させていた

2020/08/07
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部下の貯金が少ないとキレる

 戒田氏のハラスメントについては、多くの情報が寄せられた。筆者は複数の元空挺団員を含む陸上自衛隊関係者に取材したところ、以下のような所業が明らかになった。

「2018年11月、戒田氏は空挺団の中に借金がある団員がいることを知り、『金銭管理ができていないやつは自衛隊失格だ!』と激怒し、部下全員の貯金やローンなど、家計について書類提出させたのです。戒田氏なりの貯金の基準は100万円らしく、それ未満だと罵倒し、それ以上だと『エラい!』とわめきちらしていていました。借金を抱えている事実を周囲に知られ、恥をかいた隊員は少なくありません」(第1空挺団関係者)

 改めて言うまでもなく、自衛隊であろうと個人の金銭事情はプライバシーの最たるものである。個人情報や人権を保護する観点からも最悪だが、現場の士気は著しく下がった。

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2018年の降下訓練始め(陸上自衛隊フォトギャラリーより)

 また、別の第1空挺団関係者も嘆きを口にした。

「この無意味な『調査』は通常業務とは別に行われたため、集約に当たった各部隊の指揮官は早朝出勤に加えて、課業後の残業が1日当たり2~3時間増えました。ひどいときには深夜11時までの勤務や土日出勤も強いられています。空挺部隊本来の訓練もできず、これでは最精鋭部隊に入った甲斐がありません」

 自衛隊員は国民の税金で雇われた公務員であり、個人の恣意的な命令で時間とエネルギーをムダにしていい理由は何一つない。

「中間管理職も、間接的な被害者であるといえます」

 パワハラ事案に詳しい、弁護士の佐々木亮氏が解説する。

「今回のケースは、一般的に定義されている『パワハラ6類型』のうち、『精神的な攻撃(ひどい暴言)』と『個の侵害』に当たります。借金や貯金は基本的には個人の問題で、業務には何も関係ありません。民間企業であれば、民事訴訟で損害賠償請求の対象となるでしょう。

 また、とりまとめに当たった中間管理職も、本来やる必要のないハラスメントに関する命令を受けているので、間接的な被害者であるといえます。

第1空挺団による展示降下(陸上自衛隊フォトギャラリーより)

 私が過去に相談を受けた、業務と関係ないことについて言及したパワハラの暴言としては、『親は破産しているのか? おまえもそうなるだろう』といった類似例があります。

(本件では)『借金をして脅されるリスクがある』『機密情報を漏らすリスクがある』との言い訳も考えられますが、そもそも上司がみんなの前で公表して罵倒するなど論外です」