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韓国軍慰安婦や駐韓米軍の慰安婦

──『反日種族主義』では、「種族主義の牙城、慰安婦」という部を立てて、慰安婦問題を歴史的、社会学的、文化的なアプローチで考察し、様々な事実を明らかにされました。日本軍の慰安婦は日本で1870年代に施行された公娼制度の一環で、これが植民地時代の朝鮮に移植され、さらに戦時の軍慰安施設に公娼制が取り入れられたわけです。一方、朝鮮王朝には古くから官婢(官に属した下層階級)に妓生がいた。妓生制度があったわけです。そういった歴史的な背景を抜きに、慰安婦を性奴隷や強制連行という言葉で語ってしまうことはおかしいという指摘でした。

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「私はかつて韓国古文書学会をつくりました。ある日、この学会のチームが韓国京畿道坡州市にある個人博物館の調査に行こうと言い出し、そこには慰安婦に関する資料があるというので、『私も行くよ』と同行することにしました。そこで見つけたのが、ビルマやシンガポールで慰安所を経営していた朴治根(パクチグン)という男の1916年から1957年までの日記でした。非常にびっくりしました。日記を読むと、慰安婦たちは自分の意思で慰安婦を辞めて廃業し、故郷に戻ったりしています。自由に行ったり来たりしているし、慰安所の経営者が女性の募集で苦労している様子も具体的に書いてありました。慰安婦は性奴隷などではありませんでした。慰安婦たちは自分自身が営業の主体だったことを示していました。債務さえ返済すれば故郷に戻ることができたのですから」

──韓国では、1945年以降も慰安婦は存在しました。朝鮮戦争での韓国軍慰安婦であり、その後の韓国都市の私娼街での慰安婦、あるいは駐韓米軍の慰安婦たちです。そういった韓国の慰安婦たちについて、『反日種族主義』では過去の調査データをもとに詳細な実態を報告しています。

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「ソウル大学はじめ各所に民間慰安婦に関する調査データや論文があります。私はこれらを集めて分析したのですが、非常に驚きました。彼女たちの悲惨なあり方は、日本軍慰安婦より厳しく悲しかった。ある女性に『あなたは日本軍慰安婦と米軍慰安婦のどちらがいいか』と聞くと『日本軍』と答えたという。所得水準もありますが、日本軍慰安婦は暴力から守られていた。妊娠からも保護されていました。米軍慰安婦は流産を強要され、出産したら、赤ちゃんは米国に連れ去られました。毎年1000人以上の赤ちゃんが米国に連れて行かれたのです。私は本当に怒りました。自分たちにこんなにも悲惨な悲しい歴史があったのかと」

 

──それなのに、「反日」のために日本軍慰安婦の問題だけが突出したわけですね。

「日本軍の慰安婦問題が日韓の外交問題になってから28年(1 991~2019年)、慰安婦問題は両国関係を悪化させてきました。自分たちの内部の問題には目をつぶり、外部に敵対的な種族主義で日本を批判する。非常に危ない傾向です。こうした種族主義が韓国を内部から崩壊させてしまうのです」

反日種族主義と日本人 (文春新書 1258)

久保田 るり子

文藝春秋

2020年4月20日 発売

反日種族主義との闘争

栄薫, 李 ,栄薫, 李

文藝春秋

2020年9月17日 発売