2018年には、前年の「クラフトボス」のヒットもあり、各社が相次いで参入して一気に市場が拡大した。仕事中に喫煙するような短時間休憩が減り、デスクにいながらリラックスする働き方が増える中で、再栓できる容器の価値が高まり、ちびちびだらだら時間をかけて楽しめる “ちびだら”飲みができるペットボトルコーヒーが、コーヒー飲料市場の主役になった。
ペットボトルコーヒーの勢いは、容器別の構成比の実績にも表れている。
清涼飲料市場全体の容器構成比は、液量ベースでペットボトルが75.2%となり、缶容器の11.9%を大きく上回っている(2019年、全国清涼飲料連合会調べ)。
一方、コーヒー飲料は、缶容器が48.0%でペットボトルの43.9%を上回る。だが、10年前は缶容器が70.8%でペットボトルが16.5%と圧倒的な差があった(2010年、同)。コーヒー飲料でペットボトルが市場を牽引するトレンドは加速している。
あるメーカー担当者は、「コロナ禍の環境が、より私たちの戦略を明確にし、よりやらなくてはならないことをはっきりさせた。環境変化をしっかり捉えながら戦略を考えたい。今後はペットボトルコーヒーがブランドの中心となるだろう」とし、缶容器が中心だったこれまでの商品戦略を変更する考えを語る。
コロナ禍で増えた「本格的な味わい」を求める消費者
そのコーヒー飲料にも新たな潮流が生まれようとしている。
現在、飲料メーカーが注目しているのは、コロナ禍で焙煎されたコーヒー豆やその粉を抽出器具で淹れたり、カプセル式マシンで楽しむ嗜好品の家庭用レギュラーコーヒーが、前年より20%以上売上が伸長したことだ。今後、コーヒー飲料もレギュラーコーヒーや、カフェのような味わいを求める人が増えると考える商品担当者は少なくない。
そのため、現在市場を牽引するペットボトルコーヒーでも、今年は本格的な味わいを訴求する企業が増えている。
サントリー食品の「クラフトボス」は、9月からコールド商品を季節に合わせた味わいに刷新し、ホット商品はコクを強化した。同社は「夏のアイスコーヒーは、飲みやすさを背景とした“止渇”の快適さを提供していた。秋冬は、眠気や暑さをクールダウンしてくれる“起動”の快適さを提供する」と話す。ブレンデッドウイスキーのような製法を採用し、5種類の異なるコーヒーを合わせるなど、ユニークなモノづくりを活かして秋冬向けの味わいを目指したという。