缶コーヒーのもつ「ブランド力」は特別な存在
そこで各社は、従来から愛飲しているヘビーユーザーとの絆づくりを重視し、働く人を励まし、楽しませるWEBコンテンツやキャンペーンを継続強化している。
大手2社をみると、コカ・コーラシステムは、対象商品において、当たりが出たら対応自販機でもう1本もらえる「ジョージア“運だめし”キャンペーン」を9月から開始した。SOT缶は「エメラルドマウンテン」など3品が対象で、赤いプルタブがクジという、遊び心のあるユニークな企画を展開している。
サントリー食品は、「コロナがどうあれ、缶コーヒーの“ボス”は、変わらず今日も“現場で働く人”に寄り添い続ける」とする。9月は香料不使用で力強い香りとコクの「スピリットオブボス」を発売。ヘビーユーザーに向けたマーケティング活動を継続強化し、自販機キャンペーンやWEBコンテンツを充実させている。
また、缶コーヒーは新商品こそ減っているが、商品パッケージのデザインを工夫するメーカーが増えてきた。
代表例としては、「ワンダ」の“進撃の巨人”や、「ダイドーブレンド」の“鬼滅の刃”デザイン缶がある。主力商品のパッケージデザインに、ユーザーの好む人気アニメキャラクターを採用することで、トライアルとリピート購買をねらった施策だ。他の既存商品も品質のブラッシュアップやパッケージ変更もユーザーの声を聞きながら毎年行われている。
ここまで各社が「缶コーヒー」に注力する背景には、仕事とコーヒーは切っても切れない関係があるためだ。「仕事にメリハリをつけるには、やはりコーヒーが役立つことを多くの人が気づいており、それを簡単に飲める容器入りのコーヒーで何とか解決しようという動きが見られる」(大手メーカー担当者)。
ヘビーユーザーの多い缶コーヒーは、長い間、働く人々から支えられることでブランドを育成してきた。現在はペットボトルコーヒーが販売構成比を伸ばしているが、今後どれだけ市場を席巻しても、大手各社のコーヒーブランドは、缶コーヒー生まれであり、ブランド力を強化するためにも各社の軸足は缶コーヒーから離れることはない。
ユーザーの変化により、缶コーヒーの市場規模が徐々に縮小したとしても、圧倒的に多いヘビーユーザーの期待を裏切ることがないように、ブランド力を生かし、ユーザーとの“絆”を深めるための活動は、これからも続く。
飲みきりサイズにより短時間で気分転換ができ、寒い冬には手を温められ、誰かとの会話のきっかけにもなっていた缶コーヒーは、これからもヘビーユーザーの“仕事の相棒”として存在し続けるだろう。