歌舞伎町では何が起きていた?
日本も海外からの技能実習生受け入れを増やしているが、労働力を完全に依存するところまでは、経済構造が欧米化していなかったこと、少人数で散らばって暮らしている実習生たちが比較的教育水準が高く、リテラシーが高いことも、他国の移民コミュニティのような大規模流行が起きていない主な理由だと、押谷教授は話す。
日本で感染連鎖が維持されやすかった環境は、都市部の歓楽街だった。とりわけ突出していたのが全国のホストクラブの3分の1が集積していると言われる新宿・歌舞伎町で、一時、新宿のPCRスポットの陽性率は30%を超えた。
「ここでどのようにして感染拡大が起きたのかは、正確にはわかっていません。ホストクラブのお店で稼いでいる売れっ子はほんの一握り。多くは安い給料で雇用されていて、寮暮らしをしています。彼らの多くはホストで身を立てるつもりはなく、何らかの夢を持って東京に出てきた人たちだと考えられます。その受け皿がこういった寮で、そこが感染リスクの高い環境となっていました」
「一時閉鎖」に賛成しなかった理由
ウイルスを運んだのはホストだけではない。客である女性も同じだ。そして彼らが都心部の歓楽街から地方へ、そして地方から都心部の歓楽街へ……「ピンポンラリー」のように感染連鎖が拡がったとみられている。
「ホストクラブに通う女性たちのうちの一定割合は繁華街で働いています。ホストクラブで女性客が感染し、次々に異なる店でクラスターが起きて、クラスター連鎖につながったというメカニズムが考えられます」
専門家の間では、「歌舞伎町を一時閉鎖すべきだ」という意見もあった。
「確かに韓国では、クラスターが起きたナイトクラブのエリアを封鎖して、感染を抑えることに成功していました。ただ、閉鎖してしまうと、ここで働く人々が稼ぐために他の地域に散って、むしろ各地で感染を広げてしまうという懸念もされました」