文春オンラインで昨年に実施した「もう一度やりたい!プレステゲーム」アンケートで、トップは並みいる名作・傑作を押しのけて、「ファイナルファンタジー(FF)」になりました。ダウンロード版を含めると1987年の第1作発売から世界出荷1億5900万本以上を誇る大ヒットシリーズですが、実は企業存亡を賭けた“崖っぷち”から始まったのはご存じでしょうか。先鋭的な挑戦と逆転を続けた軌跡を振り返ります。
「ドラゴンクエストの対抗馬になるものは扱えない」
FFの誕生は、ファミコンに参入したスクウェア(当時、現スクウェア・エニックス)がなかなかヒット作を生み出せず、経営の苦しい「存亡の危機」に立たされていたところからはじまります。エニックスの人気ゲーム「ドラゴンクエスト」に注目したゲームクリエーターの坂口博信さんが、「最後に大きな夢を見よう」と残された資金と社内の開発陣を総動員してRPGの開発に着手。崖っぷちの土壇場で、まさしく「最後の夢(ファイナルファンタジー)」を抱き、力をふりしぼって生み出されたのが初代FFでした。
当初は、情報を掲載してもらうため雑誌社に行っても「ドラゴンクエストの対抗馬になるものは扱えない」と門前払いをされるなど、苦労もあったといいます。しかし、市場は「面白いもの」「良いもの」を放っておきませんでした。
初代FFは、「ゲームは子供のもの」と思われがちな中で、イラストレーターの天野喜孝さんを起用し、クールでスタイリッシュな作風に仕上げました。ゲームの序盤を終えてからオープニングが立ち上がるなど演出面でサプライズがあり、天才プログラマーの手でありえないハイスピードで動く「飛空艇」を登場させて、ゲームファンの度胆を抜きました。初代FFは50万本のヒット作となり、シリーズの快進撃は始まります。
進化を続け日本を代表する大作ゲームに
FFシリーズといえば、常に挑戦をすることでも知られています。RPGではキャラクターが敵を倒して経験値を貯めてレベルアップをして強くなるのが定番です。FF2では、レベル制ではなく、武器や魔法の使用、戦闘中の行動で能力がアップするシステムにしました。FF3では、その後のシリーズでおなじみになったナイトや黒魔道士など好きなタイプの“職業(ジョブ)”が選べるシステムを導入。自由度の高さもあり、さらに人気となりました。
その後も快進撃は続きます。三角関係と裏切りという大人の物語を描いたFF4。ドット画のCGの美しさを極め、オペラの演出を取り込んだFF6。このころにはシリーズの新作を出せば、確実に200万本以上の売り上げが見込める、日本を代表するゲームに成長しました。