他方、元トーク番組ホストのジェイ・レノは、アジア人のイヌ食についてなどのヘイト・ジョークを長年発し続けたことを謝罪。メディアにおけるアジア系の人権団体MANAA(Media Action Network for Asian Americans)が10年以上にわたってレノに要請してきたことだが、アトランタ事件が起こり、ようやくの謝罪となった。
ウェブサイト『Teen Vogue』の新編集長に決定していたアレクシ・マカモンドはアジア系へのヘイト・ツイートが発覚し、降板。10年以上も前の高校生時代のツイートではあったが、「寝起きにアジア人の腫れた目にならないように」「アホなアジア系の教員助手」などと繰り返しており、同サイトは10代の読者に向けて社会問題を積極的に取り上げるメディアであることから強い批判が起こっていた。
差別と闘う「#YellowLivesMatter」が賛否両論の理由
上記がアジア系ヘイトクライムの現状だが、付随する問題は他にもある。SNSで #YellowLivesMatterが使われ出したところ、賛否両論となった。
#BlackLivesMatter運動を忍耐強く続けてきたアフリカン・アメリカンの中には他のグループにフレーズを借用されたくないと言う人がいる。アジア系の中にも「イエロー」を使いたくないとの声がある。そもそもアフリカン・アメリカンとアジア系は共にマイノリティでありながら、その関係性には歴史に基づく緊張感がある。また、一連のヘイトクライムの加害者にアフリカン・アメリカンが少なからず含まれている事実もある。
なお、米国ツイッター社は #YellowLivesMatter ではなく、#StopAsianHate、#StopAsianHateCrimes を認定し、ハートのイラストを付けている。
その一方、BLMに参加し続けたアジア系 #Asians4BlackLives もあり、アトランタ事件の直後、ニューヨークでは「ブラック&アジアン連帯」と銘打ったイベントも開催されている。
いずれにせよ、この記事を執筆している最中にもアジア系へのヘイトクライムのニュースがいくつも飛び込んできた。少なくともコロナ禍が終焉するまで、アジア系市民は日常生活に十分に気を付けなければならない。同時に自身が属するアジア系コミュニティ、他のコミュニティ、政界などと連帯し、事態の改善を進めていく必要がある。