DJ社長らはLife Group株式会社との契約を更新しなければ、3年間にわたって、YouTuberとして活動ができなくなってしまうとする契約で、「独占禁止法違反になる可能性があり、憲法上保障されている職業選択の自由(憲法22条1項)を侵害されかねない」(伊藤弁護士)という。【4 メンバーとLife Group株式会社の専属契約は適切だったか】を判断するうえで重要なポイントとなりそうだ。
「2006年12月、同じような事例で訴訟に発展しています。芸能事務所と2年間の専属契約をした歌手が、契約期間満了前に契約解除の申し入れをしました。契約書には、契約終了後2年間の芸能活動を制限する条項が記載されていたのですが、裁判所はこの条項について『実質的に芸能活動の途を閉ざすに等し』いため、『契約としての拘束力を有しない』と判断しています」(同前)
また、2019年9月25日には、公正取引委員会がタレントの契約終了後の活動制限について、プロダクション側に正当な理由がない限り、原則として独占禁止法違反にあたると発表。これを受けて、最近では「芸能事務所側はタレントとの契約書を見直すなどをしている」のだという。
「現在はタレントが不利になるような契約が見直されている時代です。そんな状況の中、DJ社長らに課せられた3年にわたる活動制限は長いと言わざるを得ない。タレントに過大な不利を与えるとされ、公序良俗に反するとされる可能性もあります。事務所はタレントの芸能生命を脅かす様な契約を行うべきではありません。
ただ、2006年12月の判例では、事務所は所属タレントの活動のために資金等を費やしていることから、所属タレントがその資金を上回る利益を事務所にもたらさないうちに専属契約が終了した場合は、『事務所が支出した費用を所属タレントが補填する』という契約には有効性があるとしています。
今回のケースでも、DJ社長らがLife Group株式会社が彼らに投資した額を上回る利益を還元していないのであれば、会社側がそれを補填する額を請求することができると判断される可能性はあります」(同前)
『優越的地位の濫用』に該当する可能性
DJ社長はこうしたタレント側に不利な契約を結んだことについて、文春オンラインの取材で「社長としての責任を果たせていなかったことは後悔しています」と悔恨の念を吐露している。しかしDJ社長は「何度か(契約書を)更新して締結しているが、ライブ前に楽屋でいきなり書面を持ってきて書いてと言われたこともあった」と、【5 専属契約締結の方法は適切だったのか】について疑義を呈してもいるのだ。
前出の伊藤弁護士は「民法上の原則からすると違法ではない。しかし、場合によっては『優越的地位の濫用』に該当する恐れがある」と見解を示した。