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東京五輪へ猪突猛進…日本国民猛反発でもバッハ会長が自信満々でいられるワケ

東京五輪へ猪突猛進…日本国民猛反発でもバッハ会長が自信満々でいられるワケ

2021/06/16
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「バッハを勝たせるためには、何でもやる」

 ドイツの公共放送局WDRは、2013年9月にバッハに関するドキュメンタリー番組を放映した。この中でWDRは、バッハと親しいクウェートの元エネルギー大臣アル・サバーハにインタビューしている。アル・サバーハは、1992年から2018年までIOC委員だった他、2015年から2年間FIFAの執行委員も務めた。「国際スポーツ界最大の黒幕」と呼ばれる人物だ。

 アル・サバーハは、バッハの強力な支援者だ。番組の中で「私はバッハを選ぶ。彼を勝たせるためには、何でもやる。これはバッハとの12年前の取り決めに基づくものだ」と公言した。アル・サバーハは現在スイスの司直に追及されている。彼は文書偽造などの罪で起訴されており、今年2月に初公判が行われた。有罪判決を受けた場合、最高5年の禁固刑に処せられる可能性がある。

 さらにグアム・サッカー協会のライ会長は、2017年に米国の法廷で「FIFA会長選をめぐり、100万ドル(1億1000万円・1ドル=110円)の賄賂を受け取った」と自白し、贈賄工作にアル・サバーハが関与していたと述べている。

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 アル・サバーハは2つの嫌疑を全面否定しているものの、IOCやFIFAなどの大半の役職から退いている。

 バッハを高く買ったサマランチ(1980年~2001年までIOC会長)は、スペインの独裁者フランコの支持者で、ファシスト政党の党員だった。サマランチが1974年にフランコを称えて右腕を上げるファシスト風のポーズを取っている写真も見つかっている。今日であれば、ポリティカル・コレクトネスの観点から、このような人物がIOC会長を務めるのは不可能であるはずだ。だがバッハがサマランチによって抜擢され、IOCでスピード出世したことを、問題視する人はいない。

 テフロン加工のフライパンは、油などが付着しても簡単に拭き取ることができ、汚れがこびりつかない。バッハの周辺人物に醜聞が浮上しても、彼には累が及ばない。この「強運」も、バッハの猪突猛進に拍車をかけているのかもしれない。(文中敬称略)

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出典:「文藝春秋」7月号

 不遇な少年時代ながら、フェンシング金メダリストになり、ビジネス、スポーツ界で成功したバッハ会長の半生を追い、彼のドイツでの評価をつづった熊谷徹「バッハIOC会長『ぼったくり男爵』の正体」は、「文藝春秋」7月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

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バッハIOC会長「ぼったくり男爵」の正体
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