ダブルアンコールされるアニソン
アニメは字幕だけではなく、アラビア語の吹き替えも増えており、アラビア語の声優も増えています。吹き替えだけでなく主題歌が日本語でアラビア語の字幕、もしくは現地の歌手がアラビア語で歌っているものもあります。アラビア語版の曲も人気がありますが、日本語のオリジナルの曲を聴きたいためにわざわざ日本にまでライブへ行くアラブ人も多数います。
前述した日本のアニメコンテンツを扱った「サウジアニメエキスポ」イベントでも、水木一郎さんの『マジンガーZ』『アストロガンガー』、ささきいさおさんの『UFOロボ グレンダイザー』の主題歌は現地からの希望で日本語そのままで歌われたほか、現地の歌手との共演で『宝島』をアラビア語と日本語の両方で歌い、ダブルアンコールされるほどの大人気でした。『アストロガンガー』は他にもイラクの交響楽団で演奏、合唱が行われるなど、これらの曲がいかにアラブで人気があるのかを如実に表しています。日本のアニメをテレビで観ていた当時の子供たちが数十年を経て、大人になってから母国のイベントで本物の主題歌をライブで聴けることに多くのアラブ人が熱狂していました。
アニメ好きのカタール王族と『スレイヤーズ』を語り……
アラブ人のアニメ愛の深さを感じる出来事として、こんなこともありました。
仕事でカタールテレビに行ったときのことです。ビジネスの交渉で出向いたのですが、当時カタールでも私の知名度があったせいか、なぜか番組制作スタッフにつかまり突然番組に出演することに。何かわからないままカタール国民向けのPR動画をいくつか撮ることになりました。アラブ世界や中東ではこのパターンが非常に多く、突然の取材や撮影がひっきりなしにやってくることもしばしばあります。私はある程度麻痺して慣れてしまったのでなんとか対応できますが、これが現地のイベントで招かれたVIPやアーティスト、漫画家の方などの場合ですと本当に突然なので対応に困ることが多々あります……。
そのときもホテルで休んでいると突然カメラマンとレポーターがやってきて、「いまから撮らせてください!」と、急展開。事前にアポをとって交渉をしてから撮影、ということをしてくれればいいのですが、中東ではだいたいのことがその場のノリで予定にないことが突如進んでいくことがある、と思っていただいて間違いありません。