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熱海の「産廃土石流」に一言モノ申している小泉進次郎さんが知らないこと

2021/07/15
note

問題は政治的にどこまで詰められるのか

 で、これらの話というのは静岡県や熱海市が「死者が出るほど凄惨な事故が起きたので調査します」と言ってますが、はっきり言えば、構造もどこのゴミかも業界の人なら何となくみんな知ってる話なわけですよ。問題は、政治的に、どこまで詰められるのかという話だけです。

 さらに、このような「無許可で宅地造成法を逃れながら事実上の産廃最終処分場にしている」という場所は、全国にかなりあります。古き良き産廃業界の闇であり、日本における環境問題の一番ドロドロした部分ですが、二束三文で山林を買って、処分費をかけたくない家電やゴミを粉砕して土砂として埋めるということは過去から現在にいたるまでかなり横行しています。今回は熱海という比較的人の住んでる地域で起きた話なので、住民トラブルになり自治体も気づいて警告していましたが、道府県によってはいつのまにか渓谷が埋められて汚水が出ているのに山林を保有していた業者が倒産するまで気づかなかったという事例は多数あります。

©文藝春秋

昭和なことがいまなお続いているのが日本

 先日、自衛隊基地や原子力発電所周辺の「重要な土地」の売買を規制する法案が成立するにあたり解説記事を書きましたが、そもそも問題となりそうな土地をいまの不動産登記法などにのっとって自治体が管理しようにも登記業務がデジタル化さえされておらず、本当の買い手が誰なのか自治体も都道府県も国家も分かってないなんて昭和なことがいまなお続いているのが日本です。

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「原発・基地周辺の土地」を、中国人らが購入している問題の「深い闇」
@gendai_biz
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84444

 大学の小さなトラブルでマスコミが雇った若い女性記者の蛮勇をジャーナリスト魂だと言って称賛するわりに組織が彼女を守らなかったり、森友学園でゴミが埋められていた土地を巡って大騒ぎする割に、本当に国民の安全や環境の保全のために取り組むべき本件について1週間経過してなお誰もまともにこの問題の本質に触れられないままであるというのはちょっと信じられません。普通に取材すれば、登記を辿るだけでも(今回は幸いなことに)いくらでも出てくるものなのですが。

 小泉進次郎さんにおかれましては、ソーラーパネルの設置基準がどうとかいう話ではなく、都道府県や自治体が手がけたくても難しいこの手の昭和の闇が支配する産廃問題を解決するエージェント組織でも作ってくれたほうが、日本の環境問題解決には大きく資するのではないかと思うのですが。

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熱海の「産廃土石流」に一言モノ申している小泉進次郎さんが知らないこと

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