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いろいろな意味で「先が見えない」

『おかえりモネ』という作品から目が離せない要素がもうひとつある。それは「今を描く」ことを目標にしたこの作品が目指す2021年、我々の現在が、今なお流動しているということだ。

 コロナ禍によってスケジュールが移動した『おかえりモネ』の最終回は10月29日に放送されることが決定している。安達奈緒子の脚本は最終回、日本の『今の現実』に近づくだろう。だが、最終回放送予定の10月29日がやってきた時、僕たちの現実がどんな姿をしているか、まだ誰にもわからないのだ。

 この原稿を描いている時点で、東京都の1日の感染者数は5000人を突破した。毎日のニュースでは、放送中の連続ドラマの出演者がCOVID19に感染したというニュースが次々と飛び込んでくる。

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 清原果耶たちキャストがいかに入念に感染対策をしていようとも、デルタ株と呼ばれるこれまでとまったく違う感染力を持った変異株は、同じように感染対策を徹底したはずの現場を次々と食い破っている。ドラマのクランクアップまで、撮影が無事に完走できる方が幸運とさえ言える状況だ。

『いだてん』には1964年の東京オリンピックというゴールがあった。だが、『おかえりモネ』のゴール、2021年の「現在」はまだ揺れ動いている。それが「今」を描くことのリスクである。

 この物語の最終回が放送される予定の日、僕たちは「一時はどうなるかと思ったけど、大きな山は越えて、もう一度社会を立て直していかないとね」と思いながらこのドラマを見ることができるだろうか。それとも「朝の連続テレビ小説など放送している時ではない」と思いながら、息を殺すようにしてマスクをして報道特別番組を見ているのだろうか。

 2021年10月29日、安達奈緒子が2021年に向けて書いた脚本と、僕たちの現実は「答え合わせ」の瞬間を迎える。その時、長い旅を終えたフィクションの中の主人公を「おかえり」と視聴者が微笑みで迎えることができる社会であることを、今は祈りたい。